最強の学閥「三田会」

慶應義塾大学のOB会組織である「三田会」は日本の産業界にネットワークを張り巡らせているが、そこには明らかに功と罪がある

 最新号の「週刊ダイヤモンド」の特集タイトルは、「慶應三田会 学閥の王者」である。慶應義塾大学のOB会組織である三田会が張り巡らすネットワークの実態と、その功罪について、60ページを超える、些かやり過ぎではないかとも思う大特集を展開している。

 特集では、ネットワークの中で物件情報を回して多数の成約にも至るという不動産三田会のような業界単位の三田会、中には一社に1000人を超えるメンバーを擁して時には出世にも影響を与える各企業単位の三田会、それに、ニューヨーク三田会のように世界の各地で慶應義塾大学OBの駐在員などが連携を図る地域ごとの三田会など、三田会の驚くべき拡がりが詳述されている。

 筆者は、過去に12回転職しており、勤務経験のある企業の中には、企業内に三田会が存在している会社もあったし、世界各地の三田会の話題などをフェイスブック等で目にすることもあるので、これまでも三田会の存在を意識はしていたが、ここまで広く強固な組織をなしていたとは知らなかった。

 本稿では、学校単位の人的なネットワークとメンバー内部での便宜の図り合いを「学閥」と捉えて、学閥の功罪について考えてみたい。

 あらかじめ結論を言うと、筆者は、組織外の学閥ネットワークにはポジティブな価値があり、これを構築・利用することは構わないと考えるが、申し訳ないが、三田会に限らず、企業内に作られた大学別のOB会は、「不公平」で「品がない」ので、自粛すべき存在だと考えている。

大学の付加価値としてのOBネットワーク

 近年、大学を選ぶ生徒の側では、大学OBのネットワークの価値を大いに意識しているようだ。「週刊ダイヤモンド」の特集でも触れられているように、近年、早稲田大学と慶應大学の両方に合格した生徒が、慶應大学を選択するケースが増えている(かつては、早稲田が多かった)。現役の大学生に話を聞いてみた感触でも、慶應側の人気が高い。