ITとネットは世の中を便利にしかしていない
ITとネットは世の中を便利にはしましたが、本当に困っている人を救えるのでしょうか。
この点について、私はこれまですごく懐疑的でした。特に日本では、IT・ネット関連の機器やサービスは若い人の生活を便利にしてきただけだからです。極端に言えば、今や生活に不可欠になっているものの、最悪それがなくても人生困らない、人の生き死ににまでは影響ないものばかりです。
その一方で、IT・ネットの普及は、世界中で文化やジャーナリズムという社会のインフラを衰退させるなど、まだ今の段階ではその負の側面ばかりが際立っています。
たから私はIT・ネットについて否定的になってしまうのですが、もしかしたらその力で困っている人を救えるかもしれない、と思える大事な社会実験がスタートしました。私もその実験に深く関わっていますので、今週はそれを紹介したいと思います。
北海道白老町での独居老人の生活苦
北海道の苫小牧のそばに白老町という自治体があります。新千歳空港から車で1時間くらい、人口2万人の小さな町です。洞爺湖サミットの夕食会でも供された白老牛の産地、そしてアイヌ文化で有名な場所でもあります。
この白老町は深刻な問題を抱えています。それは高齢化の急速な進展です。高齢化率(65歳以上の高齢者が人口に占める比率)が33%と、日本の平均をはるかに上回っています。
そして、この数字だけからは分からない、より深刻な問題が起きています。人口2万の約1割にあたる1750人もの人が独居老人、つまり一人暮らしの高齢者なのです。しかも、多くの独居老人の方々は不便な場所に住んでいます。