「優しさ」と「美学」を持つ経営者が理想
【藤沢】社外取締役の考え方についてもお話を伺わせてください。せっかく会社でいい文化をつくっているときに、社外取締役が来て、たとえば報酬委員会とか、人事委員会とかをつくって、何も知らない人が報酬体系や人事制度に口出しするわけですよね。カヤックでは、そういうのも面白く使っちゃおうという感じなんですか?
【柳澤】社外取締役とはよい議論ができていると思います。取締役会が毎回楽しみで。「この人に話を聞いてみたい」という人を選んでいるので、いてくれて本当によかったと思っています。
【藤沢】最後に、柳澤さんにとって、経営者というリーダーにはどのような人がいいのか、イメージはありますか?
【柳澤】うーん……どれか1個ってのは難しいんですけど、ぼくの好みの話をすると、「人間の可能性を信じている」というか、「やさしい」人。そんな経営者はいいなって思いますね。
あとは、やっぱり、「美学がある」人ですね。「絶対こういうことはしない」みたいな軸がある人が経営している会社はいいですよね。それは言い換えると「理念がある会社」なのかもしれない。
【藤沢】ところで柳澤さんは、なんで会社を大きくしたいんですか?
【柳澤】うーん。そこはスポーツでなぜ自己ベストを目指すのかというのと同じ問いなのかもしれないですね。
【藤沢】面白い!そこに男と女の違いがあるなって、いつも思うんです。男の経営者さんはよく、「とにかく会社を大きくすることが楽しくてしょうがない、面白くてしょうがない」って、すごく無邪気におっしゃるんです。逆に、「大きくすることが面白い」って無邪気に言う女性の経営者にはあまり会ったことがなくて。男性の経営者は見れば見るほどすごく無邪気に「大きくするのが楽しくてしょうがない」って言う方が多くて、「ああ男の子だなー」って思います、そういうときに(笑)。
【柳澤】「大きくしたい」ということは、そこに理屈なんてない可能性もありますね。でもそのプロセスで「この勝ち方は嫌だな」というのは持っている。ここを重視するかしないかの差があるのかなとは思います。それがが「美学があるかないか」ですよね。
【藤沢】ありがとうございます。「美学」。これが大切ですね。
(対談おわり)
シンクタンク・ソフィアバンク代表
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年、代表に就任。そのほか、静岡銀行、豊田通商などの企業の社外取締役、文部科学省参与、各種省庁審議会の委員などを務める。
2007年、ダボス会議(世界経済フォーラム主宰)「ヤング・グローバル・リーダー」、翌年には「グローバル・アジェンダ・カウンシル」メンバーに選出され、世界の首脳・経営者とも交流する機会を得ている。
テレビ番組「21世紀ビジネス塾」(NHK教育)キャスターを経験後、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」パーソナリティとして、15年以上にわたり1000人を超えるトップリーダーに取材。大手からベンチャーまで、成長企業のリーダーたちに学ぶ「リーダー観察」をライフワークとしている。
著書に『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(実業之日本社)、『なぜ、御用聞きビジネスが伸びているのか』(ダイヤモンド社)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/kumi.fujisawa.official