加藤諦三氏が斬る、人生の明暗を学歴のせいにする愚かさ加藤 諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1977年、早稲田大学理工学部教授に就任。専門分野は精神衛生、心理学。1973年以来、ハーヴァード大学准研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授。ハーヴァード大学ライシャウアー研究所客員研究員、ニッポン放送系ラジオ番組『テレフォン人生相談』レギュラーパーソナリティ。『「自分の働き方」に気づく心理学』 (青春出版社)、『劣等感がなくなる方法』(大和書房)、『人生は「捉え方」しだい 同じ体験で楽しむ人、苦しむ人』(毎日新聞出版)、『心の資産を高める生き方』『自分の人生を生きられないという病』(KKベストセラーズ)、『心が強い人 少し弱い人』(三笠書房)など著書多数。ホームページ>http://www.katotaizo.com/

加藤 何かがあったとき、その理由や原因を目に見えるもので解釈することは、最も説得力があります。学歴は目に見えるから、「東京大学卒だから……」という捉え方は多くの人の意識に浸透しやすいのです。

筆者 私の認識は、間違いだったのでしょうか……。

加藤 目に見えるものと、目に見えないものがあるわけです。目に見えないことが理由で、何かの結果が生じたとします。多くの人は、その原因を目に見えるものに置き換える傾向があります。

 たとえば、ある人が出世して役員になったときの背景やいきさつは、周囲には正確になかなかわからないし、見えないものでしょう。この場合、目に見えるものに置き換えてしまうことがあります。

筆者 なるほど。

加藤 人が成功したとき、生まれ育った家庭や、家族・親戚に立派な人がいるとか、資産やお金があるか否かなど、目に見えるものに置き換えて考えるほうが、多くの人が納得するのです。しかし、世の中には、目に見えないことのほうが事実関係としては正しいことがたくさんあるわけです。 

筆者 多くの人は、東京大学卒の人が役員になったときに、そこに至るまでのプロセスをあまり見ていないのかもしれないですね。その人がいかに努力してきたか……といったところに。逆に言えば、東大卒であっても、大企業では多くが役員になることなく定年を迎えているはずですが、そうしたことも見ていないように思います。

加藤 陰の努力が見えていない人は、駄目ですね。あらゆることの結果には過程があります。結果は見えるのですが、過程は見えないものです。行動は見えますが、動機はなかなか見えません。犯罪が起きると、新聞やテレビは「動機、動機」と騒ぎますが、実は日常生活の様々な行動に動機はあるわけです。実際の人間関係を考える上では、この動機が大切なのです。

「何となく雰囲気がいい」だけで
人の幸と不幸はかなり変わる

筆者 人が成功したとき、陰の努力に目を向けるべきことはわかりました。その努力の中で、特にどのあたりが重要なのでしょうか。

加藤 たとえば、コミュニケーション能力です。数字などで表すことが難しいですね。見えないものは、「なんとなく」という感覚が大切です。