特に日産は、旧日産時代の1984年に英国進出を発表。これが元で、当時の石原日産社長に反対する塩路日産労連会長との間で労使対立が表面化し、その後の同社の業績不振に繋がった経緯もある。それでも日産の英サンダーランド工場は、ゴーン体制以降も欧州戦略基地として大きな位置づけを示している。

 英国での日本車生産を見ると、昨年2015年は日産が48万台、トヨタが19万台、ホンダが12万台となっており、その多くをEU地域に輸出している。日産がイングランド東北部のサンダーランド、トヨタがイングランド中部のバーナストン、ホンダがロンドン西のスゥインドンに工場を持ち、それぞれがすでに20年以上かけて現地の市民権を得ており、雇用面でも大きく貢献しているのだ。

 さらに日本車各社は、英現地の生産体制の増強計画を進めてきた。日産はサンダーランド工場に220万ポンド(約33億円)を投じて、SUV「キャッシュカイ」を10月から増産することになっている。また、ホンダもスゥインドン工場に2億ポンド(約300億円)を投じ、2016年中にシビック5ドア車専用工場に切り替え、グローバル生産基地とすることで、英国からの輸出拡大を目論んでいた。

英国が本当にEUを離脱するなら
現地への投資を控えるしかない?

 このように、日本車にとって英国は、EUへの生産拠点として重要な意味を持っており、英国も日本車生産の現地化が雇用に大きく貢献していることを評価してきた。今回の英国民投票でも有名になったサンダーランドには日産の工場があるが、今や英国で最も大きい自動車工場であり、同地は日産の城下町となっている。日産とトヨタ、ホンダを含めた日本車が英国の自動車産業を支えていると言っても過言ではない。

 英国で生産されるクルマには「GB」のエンブレムがある。これは「グレートブリテン」のGBであり、これこそ英国自動車産業の誇りなのだろう。

 今回の国民投票が行われる前、カルロス・ゴーン日産社長は「英国がEUに残ることが雇用、貿易やコストの観点からふさわしい。未知より安定のほうが事業として有利なはずだ」との声明を発表している。離脱した場合、投資を控える可能性も示唆したほどである。

 またトヨタは、英EU離脱という国民投票の結果を受けて、「競争力維持、持続的成長の観点から英国の自動車産業とステークホルダーと共に、今後の動向を注意深く見守りながら検証していきたい」とコメント。ホンダも「現時点でどういった条件やルールが最終的に英国向けに置き換わるか明確でない。したがって、今後の展開を慎重にモニターしていく」とコメントした。

 今後の英国・EU間交渉の行方が注目されるわけだが、それは現段階で長期化の様相を呈しているようだ。結果的に、今回の離脱通告から実際の離脱までには2年間の猶予期間があるわけで、日本車各社は2018年秋までに戦略見直しの見極めをすればいい、との見方も出ている。