今のところは小康状態の金融市場
今後厳しい状況に直面する英国

 英国の政治混乱などが顕在化する中、国民投票後の金融市場は今のところ小康状態を保っている。英国の中央銀行であるイングランド銀行をはじめ、各国の中央銀行がドル資金を金融システムに供給していることもあり、今のところ金融機関の流動性に問題はないようだ。新興国の金融市場でも大きな混乱は見られず、概ね投資家は様子を見守ろうとしている。

 しかし、これで問題が解決したわけではない。今後、英国はより厳しい状況に直面することは避けられないだろう。すでに、EU首脳は、新しい保守党党首が選出される9月以降に離脱交渉を進めると表明した。

 そうしたEU側の厳しいスタンスによって、英国が目指していた、国民投票の結果をEUに突き付け、有利な条件を引きだすために交渉する余地は閉ざされた。そして、EU各国は「英国のEU離脱決定に後戻りの道はない」との立場を示している。

 ドイツのメルケル首相は「いいとこどりは許さない」、「単一市場にアクセスするためには義務を果たさなければならない」と厳しい発言を繰り広げている。この背景には、EUから離れる決断をした国は、その責任を取らなければならないという強い考えがある。

 厳しいスタンスを表明することで、EU各国が離脱に傾き欧州の政治がより不安定になることを防ごうとしている。当面、ドイツの姿勢が簡単に変化するとは考えづらい。英国は困難な交渉に直面するだろう。

 有利な条件を引き出したかった英国、それを許さないEU、明らかに両者の利害は対立している。その状況の中、離脱交渉、今後の通商交渉がスムーズに進むとは考えにくい。EUが少しでも譲歩の姿勢を示せば、欧州懐疑主義を掲げる各国の政治家の動きが活発化し、離脱を求める声の連鎖が起きる恐れがある。

 ドイツ等は英国に対してより厳しく、一切の甘えを許さない勢いで離脱を迫る可能性がある。それは英国内での政治をさらに混乱させるだろう。スコットランドなどが想定以上の速さでEU加盟の手続きを始めれば、英国世論は今以上にEU残留論を求めるはずだ。

 そうなると、国民投票の再実施などの機運が高まり、再度、残留と離脱双方が舌戦を繰り広げることになるかもしれない。状況はより不安定に向かいやすい。様々な問題が顕在化するのは、むしろこれからと考えた方がよい。