EUの政治不安が日本にも影響
経営戦略の見直しを迫られる企業も

 わが国では、英国と関連する経済規模が相対的に小さいことから、「EU離脱の影響は軽微」との指摘を効くことが多い。しかし、今回の問題はEUという共同体、単一市場をベースに考えるべき問題だ。

 なぜなら、金融市場は欧州全体の政治動向を懸念しているからだ。28ヵ国から成るEUは、世界のGDPの20%のシェア、5億人の人口を誇る。中国からの輸出を例にとってみると、日本向けの割合が6%程度である一方、EUのシェアは16%程度になる。

 EUの政治不安が金融市場の混乱につながった場合、直接投資の落ち込みや消費者心理の悪化は避けられない。それが、わが国に与える影響は軽視すべきではない。

 短期的に、英国の政治動向、EUの対応や各国の離脱機運などを受けて、為替、株式の市場は不安定な展開になる可能性が高い。米国の利上げも期待しづらく、円は買われやすく円高が進むことが想定される。それは、企業業績の下振れなどを通してわが国の景気を圧迫する要因だ。

 トヨタや日産、日立など、英国に拠点を置く企業は戦略の見直しを迫られるだろう。また、EU離脱が実現するのであれば、単一パスポートの失効により、金融機関も欧州事業の再考を迫られるはずだ。

 英国のEU離脱による企業の経営戦略の変更は不可避と言え、先行き不透明感を嫌う投資家心理が株への売り圧力を高めやすい。

中長期的には影響が出かねない
世界の安全保障や経済への懸念

 中長期的には、世界の安全保障にも影響が出かねない。欧州と英国が離脱交渉を進めている隙を狙って、中国が欧州進出を画策したり、ロシアがウクライナへの圧力を強める可能性がある。その場合、「欧州政治の不安定化が、北大西洋条約機構(NATO)の抑止力を低下させている」との懸念が高まるかもしれない。

 また、中国経済が減速する中で、世界経済を支えてきた米国経済の先行きにも少しずつ不安要素が見え始めている。今すぐ米国の景気が大きく減速するとは考えづらいが、労働市場が完全雇用に近いとみられる中、徐々に景気はピークを迎える可能性がある。

 主要国の金融・財政政策が策を打ち尽くした状況にある中、米国に代わる世界経済の牽引役が見当たらないことも問題だ。

 仮に米・中の景気減速、更なる欧州の政治混乱が同時に進むと、世界の経済はこれまでに経験したことのない厳しい状況に直面する可能性がある。その場合、わが国も円高、株安、そして企業業績の悪化など、多くのマイナス要因に直面するだろう。

 英国のEU離脱は政治リスクに端を発する金融市場の混乱を通して、わが国にも無視できない影響を与える恐れがあることは冷静に考えるべきだ。