貂々さん:高齢出産です。13年間ずっと夫婦2人で生活してきて、ペットのイグアナは育てたことがあるけれど、まさかこの年になって人間の子を育てるとは思わなかった。病気も治ったところで、これからどう生活するかを考え始めていたので、ものすごくびっくりしました。

ツレさん:今、イグアナは何かを察知しているらしく、盲導犬のように彼女にべったりくっついています。お腹を見せると、まず顔を見て、次にお腹を見て、それから「いやーん」と目をつぶっている(笑)。

――今、うつの体験を振り返ってみて、どう感じていますか?

ツレさん:1年くらい前までは「うつはつらいから、絶対かからないほうがいい。病気になる前に気づいて」と主張していました。でも、今考えると、病気にならないように仕事量をコントロールしながら働いていたら、自分で育児なんてできなかっただろうし。そもそも子どもも授からなかったかもしれない。病気は、自分とは別の「大いなる力」によってもたらされるもの。僕は病気によって新しい可能性を引っ張り出されたように思うので、その意味で、うつは「恩人」です。

――天がサインを送ってくれた?

ツレさん:かなり強引なサインですけど(笑)。

貂々さん:私はもともとすごいマイナス思考で、何でも悪い方向にものを考えて、そのせいでよく体調も崩していた。だけど彼がうつになってからは、「一緒に暗くなっちゃいけない」と、無理やり前向きになるように自分で仕向けていました。おかげで、体調も崩さなくなりましたし、何より生きるのがとても楽になった。それがよかったです。

ツレさん:昔は僕が楽観的で、彼女がぐちぐちいう役目だった。今は完全に役割交代。彼女が攻めで、ぼくが守り。なんだか、そのほうが居心地いいんです。 

――無意識のうちにうまくバランスをとっているんですね、一緒に生きていくために・・・・・・。夫婦って不思議です。最後に、読者にメッセージはありますか?

ツレさん:今、うつ病による休職者はとても増えているそうです。そのことを嘆く声はありますが、僕の考え方は少し違う。病気で休んだり、仕事を減らしたりするチャンスがあることを、ぜひ前向きにとらえてほしいです。無理に働かず少し休めば、空回りしている人生もまたちゃんと動き出すかもしれない。うつで休む人が多い社会は、うつ病すら認められない社会よりずっといい。だから、あせらずに休んでください。誰しも「自分が頑張らないと会社は回らない」と思いがちですが、現実はそんなことないですから。