海外の投資家は「ヘリコプターマネー」政策を日本政府・日本銀行が採用するのではないかと関心を持っている。菅義偉官房長官と黒田東彦日銀総裁は否定的発言をしているが、話題はくすぶり続けている。

300年以上前に、広義のヘリコプターマネー政策を実施したジョン・ロー。その後には金融の混乱状態だけが残されたという Photo:Roger-Viollet/アフロ

 この政策は論者によって定義が異なるが、日本で現在話題になっているのは次のようなものだろう。政府がゼロ金利の永久国債を大規模に発行し、日銀がそれを引き受ける、または、日銀がこれまで市場から買った国債をそれと交換するというアイディアだ。日銀が永久国債を保有すれば、政府はそれに関しては返済義務がなくなる。

 ただし、実現には日銀が政府から国債を直接引き受けることを禁止している、財政法第5条を修正する必要があるだろう。その法改正への着手には、現時点ではさすがに政府も慎重と思われる。

 実は人類の歴史において、ヘリコプターマネーと似たような政策は数多く実施されてきた。政府が財政赤字を埋めるために、金や銀の含有量を減らす通貨改鋳を実施したり、政府紙幣を発行したりすることは、広義のヘリコプターマネー政策といえる。

 それらの大半は歯止めが利かなくなり、経済は混乱した。江戸時代に徳川幕府もそういった失敗を何度か犯している。