本当の狙いは交通事故削減
事故死者数を4割以上減らせるか?

 米・ランド研究所は、米国における年間衝突事故530万件のうち、自動運転によって3分の1の削減が可能だと見積もっており、ドイツ・英国政府は90%以上の事故がヒューマンエラーに起因するものだとしている。また日本政府も、自動運転技術の普及により、18年をめどに日本全体の交通事故死を、現在の約4000人から2500人以下にする国家目標を掲げている。

「自動走行システムは、130年前に自動車が登場した際と同じぐらい、われわれの社会に巨大なイノベーションをもたらすと考えられています」

 こう語るのは、一般財団法人・日本自動車研究所ITS研究部部長の谷川浩氏だ。

「交通事故の大幅な減少はもちろんですが、慢性的な赤字に悩まされている過疎地の移動サービスにも、自動運転は一役買うに違いありません。他の手段と比較して赤字が少なければ、導入する価値が生まれます。しかしその場合、政府や自治体など行政の強力なリーダーシップが必要となるでしょう」

 高齢化が進む過疎地の交通は、先進国共通の悩みの種だ。テクノロジーの進化によって「レベル4」、つまり無人のバスが走るようになれば、人件費の節約に繋がり、赤字を極限まで抑え込む事ができる。

 問題は、どこの自治体も“一番乗り”を警戒することだ。自動運転の導入をいち早く進めるためには、実証実験に必要な専用レーンや管制システムなどのインフラ整備に加え、地域住民の理解が不可欠になるなど、ハードルが高い。しかし、ビジョンを持ったリーダーが音頭を取って成功を収めれば、他の市町村も続々と実験参入を望むに違いない。

「自動車はこれまでメーカー間の競争によって進化を遂げてきましたが、自動運転車の完成を目指すことが至上命令となったことで、各社が共通のビジョンを持ち、『競争領域』と『協調領域』を戦略的に切り分ける必要が出てきました。『協調領域』とは、『自動運転をどのように発展させ、そのために必要な技術は何か』という『ビジョン』と、産業を健全に成長させるためのビジネスモデルです。今や、各国やメーカーの視線は『新しい交通社会の実現』とも言うべき国家的な命題に向けられているのです」(同)