月100回の訪問介護は「異常」ではなく「模範」とすべき

「生活援助」がやり玉に

 来年4月から介護保険のサービスが大きく変わる。18年前に始まった介護保険制度は3年に一度の制度変更を繰り返してきた。来年4月が6度目の変更期にあたる。

 その審議が厚労省の社会保障審議会介護給付費分科会で月に1~2回開かれている。

 要介護高齢者は増加し続けるが財源には限界があるため、現状のサービス供給を維持できるか危うさは否定できない。とりわけ財務省の危機感は強い。総予算の3割は社会保障費に回り、なかでも、介護費用は医療や年金を上回るスピードで増えている。

 そこで、サービスの縮減が同分科会でのテーマとなっている。まずやり玉に挙がったのがヘルパーが自宅に来る訪問介護の中の「生活援助」である。

 訪問介護には、トイレ介助や入浴介助など身体に触れる「身体介護」と掃除や洗濯、買い物、調理などの「生活援助」があり、生活援助は「プロの介護者の必要があるのか」という議論が以前からあった。

 7月5日に開かれた同分科会で、厚労省が検討課題としてこの生活援助を示した。現状分析として提出した資料は、厚労省が作成したものではなく実は財務省の予算執行調査である。各省庁が予算をきちんと執行しているかを調べたもので、財務省が直前の6月27日に公表していた。

 昨年9月時点で訪問介護の状況を調べたもので、「1人当たり平均利用回数は月9回程度となっているが、月31回以上の利用者が6626人に上る。中には月100回を超えて利用されているケースも認められる」。

 これは「一定の間隔を空ければ、1日に複数回所定の報酬を算定可能なのが現行体系」であるからで、そのため「必要以上のサービス提供を招きやすい構造的な課題を抱えている」と財務省は断じる。

 ではどのようにしたらいいのか。「1日に算定可能な報酬の上限設定など報酬のあり方を見直すべき」と制度変更を迫っている。