日本でも「認知症カフェ」の普及に注力
政府が2年前に打ち出した認知症施策「新オレンジプラン」で、「認知症カフェ」の開設、普及が謳われた。認知症の本人とその家族が気軽に立ち寄って、互いの交流を深めながら認知症に関わるいろいろな情報を得られるのが認知症カフェだ。
自宅に引きこもりがちな認知症の本人が外出することで社会と接することができ、家族も認知症ケアの方法や支援団体、支援内容などを知ることができる。
以前から地域住民や介護事業者などが手探りで始めており、最近はコミュニティカフェの運営者が手掛け出している。
東京都をはじめ、いくつかの自治体は、新オレンジプランを受けて開設費や運営費を助成し出した。
その名称も、認知症を表に出さないよう配慮して「オレンジカフェ」や「Dカフェ」「レモンカフェ」などの看板を掲げて開いている。
欧米豪の各国では日本より早期に広がっており、その発祥の地と言われるのがオランダ。1997年に臨床老年心理学者のベレ・ミーセンとオランダ・アルツハイマー協会が始めた。6月のオランダ視察の中で訪れた認知症カフェの状況を報告したい。
首都のアムステルダムから北に約35km、人口7万人の港町、ホールン。そこに認知症の高齢者75人が暮らすナーシングホーム(日本の特別養護老人ホームに近い)、「ドゥ・ホーフ・ホップ(De Hoge Hop)がある。
地元のアルツハイマー協会が、この建物の1階のサロンルームを借りて、「アルツハイマーカフェ」を毎月第2水曜日に開いている。訪ねたのは今年6月21日。就労している家族が参加しやすいように始まるのは午後7時である。
毎回、テーマを決めてその関係者を呼んで話を聞く方式を採っている。この日のテーマは「認知症の人とバケーション(休暇旅行)」であった。
全部で30人ほどの人が会場に集まっていた。老夫婦や数人の仲間などのほか、認知症の当事者の隣に座っているスタッフもいる。6つほどの楕円形のテーブルを囲んだり、窓際のベンチに腰を下ろしている。目の前にはコーヒーやお菓子。アルツハイマー協会のスタッフが入口に立ち、全体の進行役となっている。
中央でマイクを手に司会役を引き受けているのは精神科医だという。その両脇に立つ2人の女性は今夜のゲスト。それぞれ別の休暇施設を運営する社員である。
「認知症の本人だけでなく、介護者にも休暇が必要です」と司会者が話し、どのような休暇を採ることができるのか、2人の事業者が現状を語り始める。