多くの経営者は、どうすれば強い財務体質の会社になれるかと悩んでいる。財務体質を強化するには、自己資本を充実させる必要があるが、増資をしたり収益を上げるのは容易ではない。しかし、増資も事業拡大もしないで、自己資本を高める方法があるという。それは「銀行取引」を見直すことだ。銀行から押しつけられている悪条件を解消するだけで、財務体質を改善して自己資本を高めることができるのだ。『社長!カネ回りをよくしたければ銀行の言いなりはやめなさい』の著者に、銀行取引と財務強化のポイントを聞く。

売上を拡大するほど、経営は苦しくなっていく

売上至上主義の
成功体験を捨てなさい

 中小企業の社長と話をしていると、「売上高を伸ばせば、すべてが解決する」と思っていることが多いのに驚かされます。しかも、そのような社長の多くは、バブル時代を経験している経営者です。

 その当時、拠点を拡大すれば売上高は確実に増え、経常利益も順調に増えました。その成功体験がまだ抜けないのです。

 しかし今や、取り巻く環境はまったく異なります。消費は伸びず、拠点を増やしても、そう簡単に売上高は伸びません。このような時代に売上高拡大を主張するのは自殺行為です。

 近畿地区郊外でお菓子の製造・販売を展開する、ノガミスイーツの野上社長(仮名)が相談にやって来たことがあります。

「資金繰りが苦しいのですが、どうすればよいでしょうか?」

 さっそく過去5年間の財務諸表を見せてもらい、質問をしました。