「貸借対照表」がわからないと、
会社のメタボは見抜けない

 売上高も利益も、財務諸表でいえば「損益計算書」(P/L)の項目です。そこには“借入金”や“返済資金”を示す数字はまったくありません。「損益計算書」では、会社経営の生命線である「資金繰りの実態」がわからないのです。

 会社の命を司るのは、「損益計算書」ではなく「貸借対照表」(B/S)です。

 その証拠に、倒産した会社があると、必ず「負債総額○○億円」と真っ先に報道されます。それはいわば、「こんなに借金を抱えていました。だから支えきれなくなって倒れました」ということです。人間の体でいえば、太りすぎです。メタボなのです。

 借入金を含む負債総額がわかるのは、「貸借対照表」です。「損益計算書」では、メタボかどうかはわかりません。

 太りすぎでメタボの人は、食欲に関して制御することが苦手です。セルフコントロールができません。アメリカでは、太りすぎの人は経営者に向いていないと判断されます。欲望を抑えてバランスのとれた経営をすることが苦手だと、みなされるからです。

 会社の数字でメタボ診断ができるのは、財務諸表の「貸借対照表」です。

「貸借対照表」が読めれば、「借入金をこれ以上増やしたら危険だな」という抑止力が働きます。過剰な借入金による投資に走らなくなります。いわば、節制できるのです。

 ところが、日本の中小企業の社長の9割は、「貸借対照表」が苦手です。読めないのです。だから、会社の借金が膨れ上がり、メタボに向かっているかどうか、判断のしようがありません。

「貸借対照表」が読めない社長の経営対策は、「売上を拡大し、利益を増やせ」となりがちです。それしか思いつかないからです。

 しかし、無謀な売上拡大は、暴飲暴食と同じです。体力を奪い、体を蝕んでいくだけです。やがて太りすぎで重度のメタボになり、身動きがとれなくなっていきます。