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ベンチャーキャピタルが収益計画を重視しない理由

投資対効果とは何の数字?

 私はエクセルを使った財務モデリングセミナー、企業研修を開催していますが、日本、海外のベンチャーキャピタルと話をすることが多くありますが、彼らはベンチャー投資を検討する際、その収益計画(P/L)そのものよりも、その背景にある「投資対効果」を見ている傾向があります。この投資対効果とはどのようなものか解説します。

 たとえば以下の図表は同業のA社とB社の売上・費用・利益です。どちらが優良な企業だと思いますか?この2社は売上が同じですが、利益はA社のほうが大きい。違いは、広告宣伝費にあります。A社は1,000千円の広告宣伝費を使っているのに対して、B社は3,000千円を使っているため、利益が少なくなっています。

A社とB社の損益計算書

 では、この数字を見て「A社のほうが優れている!」といえるでしょうか。たとえば、B社の社長がこう言っていたらどうでしょう。

「いまは広告宣伝がうまくいっていて、効率的に顧客を獲得できています。売上につながるのは来年になりますが、今年のうちに積極的に広告宣伝に投資しています」

 つまり、この広告宣伝が売上につながるのは来年なので、今年はそのぶん利益が減っても問題ない、と長期的な視点で経営判断をしているわけです。ここまで聞くと、むしろA社は将来へのマーケティングを行っていない、来年はB社のほうが利益は大きくなるかもしれないな、と感じるのではないでしょうか。

 このようにP/L(損益計算書)の問題点は、「長期的なマーケティング投資対効果を判断するのがむずかしい」ということです。