事業計画の策定は、多くのスタートアップ経営者が頭を悩ませる問題だと思います。しかし、事業計画の作り方に関する書籍や知見はあまり多く流通してないのが実情です。今回は特に、事業計画を策定した後の、計画の精度や確からしさの検証について、3Cの観点に分けて考えます。

スタートアップの事業計画 3つの検算方法Photo: Adobe Stock

Customer ユーザーの獲得ロジックは妥当か

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):資金調達を試みる際や、自社の成長戦略を描こうとする際に必要となる事業計画ですが、ことスタートアップの事業計画について参考になる関連書籍や資料は、そんなに多くありません。

我々も以前、スタートアップにおける事業計画の要否や適切な策定時期精度の高い事業計画の策定方法についてお話しましたが、今回は策定した事業計画の精度を自分で点検する方法について考えてみたいと思います。

このテーマを考えるにあたり、今回は3C(Customer、Competitor、Company)の観点から、アプローチしようと思います。まずは、Customer。顧客、市場についての観点ですね。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):事業計画の策定時、スタートアップの皆さんは当然、自社の成長を信じて計画を練ると思います。ですが、市場成長や市場との比較を考慮して策定しないと、事業計画の妥当性が疑われてしまいます。

例えば、市場は5~10%程度しか成長していないのに、自社の成長は倍々を想定するような計画です。これ自体が必ずしも実現不可能だということではありませんが、市場成長について、一定程度の注意を払った説明をすべきだと思います。

朝倉:既存事業者から市場のパイを奪うような、際立って破壊的なビジネスモデルの条件が満たされている場合には実現可能かもしれませんが、そうでなければ、合理的な説明を作り込む必要がありますね。

村上:市場と自社の関係を説明するロジックには、いくつかパターンがあると思います。まず、既に市場があり、市場の成長に合わせてどれだけその市場を奪うかという、市場の大きさに対しての市場シェアが問題となるケース。

次に、既存のサービスを置き換えていくことを想定して、置き換え率が想定したスピードで進むのかが論点となるケース。そして、新規性の高いサービスであるがゆえ、既存には類似サービスが見られず、TAM(Total Addressable Market:実現可能な最大の市場規模)自体の見通しがまだつかないというケース。

それぞれに、どのようなロジックで策定した事業計画が実現可能になるのかを検算していく必要があるでしょう。

朝倉:我々が日々接するのは、レイターステージの方々が多いため、TAMそのものが見えていないというケースはあまり多くはありません。

一方で、創業間もないスタートアップなど、「自分たちがこれから市場をつくる」、「自分たちの成長がトップラインでありTAMだ」という意気込みで臨む方々もいることでしょう。こういった場合には、そもそもどのようにTAMを想定していくのがいいと思いますか?

村上:難しい問題ですよね。風呂敷を広げる必要は当然あると思いますが、一つ挙げられるとしたら、想像するTAMの中から、一番獲得しやすい潜在的なTAMをいくつかの層に分けて管理し、説明していくということでしょうか。

まず特定のユーザーの裾野があると仮定します。その中で、強い興味を持つであろうユーザー、もう既に他の類似サービスを利用しているユーザー、といったように、顧客を細分化していくつかの層に分けます。

その上で、TAMサイズを、全体では1兆円。強い興味を持つであろうユーザー層だと3000億円。現実的に既に他類似サービスを利用しているユーザーは200億円。といったように、細分化して検討し、それぞれのユーザーをどのくらいの速度で獲得できるのかを説明するという方法は一つあるかと思います。

朝倉:なるほど。そもそも、自分たちが狙っているマーケットにおいて、今まではどういったサービスやプロダクトが不完全ながらもニーズを満たしていて、これからそれをどう置き換えていくのか。といったような、何かしらのアナロジーがあると、よりTAMを想定しやすいでしょうね。