Company As Isの姿との整合性・連続性はあるか
朝倉:最後に、3Cの中のCompany。自社についての観点から、事業計画の検証法を考えましょう。自社についても、点検しなければならない点が多々あります。
村上:はい。事業計画の策定プロセスでは往々にして未来の話ばかりしがちですが、真っ先に分析すべきなのは、過去の実績だと思います。「過去には成長していないけれど、将来伸ばしたい」という意志が強く入り過ぎてしまい、過去実績と将来の数字の連続性が担保されていないケースはよく見ます。
すると、どうしても事業計画の妥当性が欠けてしまうため、この部分の検証は怠ってはいけないと思います。一番説明しやすいのは、過去実績と将来の数字に連続性がある場合ですね。
朝倉:例えば、過去のCAGR(年平均成長率)が8%であり、今後もその成長率が見込まれます、というのは一番分かりやすい説明ですよね。
村上:そうですね。ですが、実際には、全てのKPIが連続的でシンプルな会社ばかりではないでしょう。例えば、リテンション率が上がる見込みである、またはチャーンレートが下がる見込みである、といったように、過去の実績との連続性が担保されないことのほうが多い。
そうした場合には、過去にやっていたことの何が課題で、今後何を改善することによって解消するのかという部分のロジックをきちんと持つ必要があります。「過去やっていなかったが、これからは注力する」程度の説明だと、投資家を納得させるのは困難です。非連続な数値を採用する場合、説明のハードルが高くなるということを認識して、点検していくのが一つのポイントだと思います。
朝倉:横ばい状態が長く続いた後に急激な右上がり曲線を描く、ホッケースティック型のチャートを目にすることってありますよね。今までは成長率がなだらかだったのが、資金調達後のあるタイミングから急激に成長率が上がるといった説明。
あるいは、数年後に上場を見越しているという会社が、これまではずっと赤字で、投資を経て赤字をさらに掘り、なぜかわからないけれども上場予定の1年前になると急激に売上と利益が急上昇し、ものすごいスピード感で黒字化が進むといったような。
よく目にする事業計画の説明チャートです。こうした想定自体はもちろんよいのですが、外部からは「なんででしたっけ?」という当然のツッコミを受けます。こうした疑問に対して、納得感のある説明は必要でしょうね。