Competitor 競合の存在を自社の成長にどう読み込むか
朝倉:次に、Competitor。競合についての観点から見た事業計画の検証法について考えましょう。
村上:直接的な競合がいる場合といない場合があるので、分けて考えましょう。レイターステージである場合には、大抵は競合が存在すると思うんですよね。
具体的には、自社と同じくらいのフェーズで展開している競合、先行している競合もしくは大企業、これから新たに参入してくる若いスタートアップのような潜在的競合といったように、色々な種類の競合がいるかと思います。
他社の情報を得るのはなかなか難しいでしょうが、そういった競合の成長率・スピードや成長規模、ユーザーの獲得スピード・獲得効率を意識しながら検討していくのが重要になるでしょう。
朝倉:なるほど。例えば、先行しているプレイヤーがいて、それが上場企業であれば、ある程度は情報も開示されていますから、業績などをベースに状況を分析できるはずです。
先行しているプレイヤーを新しい技術や時代に即したUXで置き換えていくことを想定する場合、既存プレイヤーのボリュームはそのまま参考数値になるでしょう。過去の実績から、競合の成長スピードも、一定程度は想定できるはずです。
一方で、「自分たちは、サイズはまだ小さいけれども、成長スピードは速いはずだ」と主張するうえで、成長スピードが異なるわけだから、先行する類似サービスの成長率をそっくりそのまま引用するわけにはいきません。この場合、既存プレイヤーの動向を、どのように参考にすればいいと思いますか?
村上:端的に言えば、ユーザー数とその獲得手法・スピードをどう考えるか、に帰結すると思います。例えば、BtoBであれば、月間新規獲得社数が○○社、BtoCであれば月々の利用者数が○○万人、といったように、ユーザー数に関する何らかの自社データがあるはずです。
これらの既存ユーザー数を分解して考えます。競合からリプレイスして獲得したユーザーなのか、それとも今までリーチされていなかったユーザーを新たに開拓したのか。競合からリプレイスした場合、手段は例えば入札によってなのか、それ以外のやり方なのか。ユーザーをどこからどうやって獲得したのか、経営している側にはなにかしらの肌感があるはずです。
これを踏まえて事業計画の話に戻ると、例えば「来期はトップラインが5億円成長する」と想定している場合、まず、自社が新しいユーザーを開拓して獲得した事による売上なのか、既存サービスのユーザーを置き換えて獲得した事による売上なのかを分けて話す必要があります。
その上で、既存サービスを利用していない新規ユーザーの獲得であれば、その獲得スピードと売上成長率。競合からのリプレイスなら、リプレイスが進む速度と売上成長率。これらの数字に関する足元の実績と将来予測が論理的に整合しているかを検証しなければなりません。
この部分を見誤ってしまうと、描いている成長率の辻褄が合わなくなってしまう恐れがあります。例えば、初期は非常に速いスピードでユーザー獲得が進んだが、それは競合から顧客を奪いやすい特殊な環境が背景にあったからだとしましょう。
その場合、その獲得スピードは、遅くてもその競合からユーザーをリプレイスしきったら止まるものです。にもかかわらず、初期の獲得スピードを、長期的な成長率の根拠に置いてしまっている場合というのは意外にあります。ここは、初期の成長率は継続しないものだときちんと想定するべきでしょう。
朝倉:自社の成長スピードを想定するにあたって、競合の成長率や規模をそのまま参考にするのではなく、実績数値を細分化することで考えるというアプローチですね。既存サービスからのリプレイスか、既存サービスを活用していない顧客の獲得なのか、その内訳によって、計画策定の考え方も、戦略・戦術も異なってきますから、まずはそこを明確に把握しましょう、と。