「写真や動画のブレを自動で解消する」「写真から3Dモデルを作成する」。一見信じられないような新機能を矢継ぎ早にリリースするアドビ。これらは「Adobe Sensei」というAI技術によって実現されていることが知られている。
そんなアドビのAI開発リーダーであるクリス・ダフィ氏による新刊『TRANSFORM AIでビジネスを変革する最強フレームワーク』が発売された。単なる未来予想図にとどまらない「AIをいかにビジネスに使うか」にフォーカスした地に足のついたビジネス書だ。
本書の発売を記念して、著者であるクリス・ダフィ氏のインタビューを実施した。(構成:大野和基)

15歳から理解できる
AIの教科書

アドビAI開発リーダーが語る <br />AIを組織に取り込むフレームワークとはクリス・ダフィ(Chris Duffey)
アドビ戦略開発部門のシニアマネジャー
Creative Cloudの企業向け戦略開発イノベーション・パートナーシップを指揮。ラトガーズ大学のデータ助言委員、全米広告主協会役員も務める。アドビ入社以前は、WPP Health & Wellnessのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターやライター、AIやモバイル・デバイスのテクノロジストとして活動。ビジネスインサイダーからは「急速に変化するモバイル・テクノロジーの世界で、特に重要と思われるテーマ、課題、ビジネス・チャンスなどを常にいち早く察知する業界のリーダーの1人」と評された。WPP、IPGといった主要なグローバル企業を含め、35もの広告代理店のクリエイティブ・コンサルタントを務めた。これまでの講演動画は合計で5000万回以上再生。各地で行った講演の様子は、『ピープル』誌、『ニューヨーク・ポスト』紙ほか多数のメディアで報道された。

――『TRANSFORM AIでビジネスを変革する最強フレームワーク』が日本で発売されました。これはどのような本でしょうか。

クリス・ダフィ(以下ダフィ):「実際のところ、AIはどんな形になり得るか」というアイデアに着想を得て、この本を執筆しました。本書の執筆は、「AIに何ができるのか」「AIの未来の可能性はどこにあるのか」を明らかにするプロジェクトのようなものでした。ですから、この本の制作のありとあらゆる点でAIを利用しました。たとえば、企画書を作る段階から、NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)の技術を使っています

――専門家やプロフェショナルを対象に本を執筆することもできたと思いますが、一般の読者を念頭にしたいと思ったのはなぜでしょうか。

ダフィ:私は前からずっとSFやハリウッドのファンなのですが、AIといえば「スーパーAI」(人間を超えた知性を持つAI)が中心になっていることに些か腹立たしい思いをしています。「汎用AI」(人間と同程度の知性を持つAI)でもなく、「ナローAI」(特定の機能を果たすために作られたAI)でもありません。

 そこで、ナローAIでも個人や企業を大きく成長させてくれることを紹介したいと思いました。AIを使うことで、効率的に働けて、仕事がうまくいくと示したかったのです。

――読者層はどういう層を念頭に置いていましたか? 若い男性とかAIを恐れている高齢者とか。

ダフィ:あらゆる年齢層の読者に、AIの技術的な側面を解明しようとしています。この本は当初、大学やMBAを取得した人や、中堅キャリアの人に読まれることを想定していましたが、世界中のあらゆる年齢層の読者から反応があり、驚いています。ある15歳の少年は、メキシコシティから連絡を取ってきて、AIの可能性を再認識したと言っていました