AIを「共著者」にして
コンテンツの質を高める

――本書は架空のキャラクターである「エメ」という名のAIとの対話形式を取っています。これは「AIの技術的な側面を解明する」のに最適だと思ったからでしょうか。

ダフィ:当初は、AIを使って本を書こう程度のことしか考えていませんでした。まず私が本文を書き、各章のあとにNLP技術の一つである「センチメント分析」(ブログやSNSの書き込みから感情を分析すること)を行うつもりでした。

 試しにやってみた結果が非常に洞察力に富んでいたので、章ごとではなく、私とAIの会話のように進行してはどうかと思いました。それが「エメ」というキャラクターが生まれたきっかけです。

 私のようなクリエイティブな仕事をしている人にとって、「対話」は安心して仕事をするためになくてはならないものだと考えています。デザインの仕事をするときは、私はいつもライターと一緒にアイデアを交換していました。だからこそ、出てきたアイデアに対して瞬時にフィードバックを受けることができるのです。対話は、ものごとをいろんな視点から見ることができます。

――実際のところ、エメのような対話をするAIは実現できるのでしょうか。

ダフィ:それは間違いありません。本書の「はじめに」に、技術的なプロセスを詳しく書いていますが、基本的に、対話はVUI(Voice-User Interface、音声ユーザー・インターフェース)を使いました。人間と機械を結びつける音声インターフェースです。

 音声を聞き、返答する段階で、いくつかの既製のNLP製品を使いましたが、正直なところちょっとした当たり外れがありました。基本的には、AIはコンテンツを探し、要約し、合成して返答します。

 はっきり言ってしまうと、実際の対話のように、私が直接AIにインプットし、AIから直接アウトプットを受けたわけではありません。AIから出力されたものは、人間の手で何度か戻し、微調整することが必要です。しかし、本書のコンセプトを考案する点においても、本を書くスピードの点においても、AIは本当に役に立ちました。私はあの本を6~7ヵ月で書き上げたのです。

――もしAIを利用しないで執筆していたらどれくらいさらに長くかかったでしょうか。

ダフィ:ほかの作家に聞いたことがありますが、平均は短くてもたっぷり1年か、1年半です。ですから、半分か3分の1はカットできました。その分、コンテンツの質を高めることができたのです。私一人では思いつかなかったようなおもしろい反応をAIから得ることができたり、意表をつかれるような方向にアイデアが進んだりしました。

――この本に対してAIの役割や手柄はどれくらいあると思いますか?

ダフィ私は、「共著者」と言っても過言ではないと思っています。本の制作プロセスに大きな影響を与えてくれたからです。

 この点について、編集者と激論を交わしました。「AIが共著者」なんて、いろいろな意味で挑発的な考えですよね。出版社の立場からすると、「共著者」という言葉には少し抵抗があるのでしょう(注:本書はクリス・ダフィ氏の単著扱いになっている)。