【寄稿】蘋果日報の廃刊、香港の全企業への警鐘Photo:NurPhoto/gettyimages

――共同執筆者のゴードン・クロビッツ氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の元発行人。マーク・クリフォード氏は香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの元編集主幹

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 黎智英(ジミー・ライ)氏は1995年、97年の中国への返還を前に香港の流儀を守ることを目的に日刊紙「蘋果日報(アップルデイリー)」を立ち上げた。その創刊の論説では「自由に慣れた香港人は不当な制限や扱いに直面しても、沈黙したままではいないとわれわれは確信している。香港人は生まれながらにして自由への情熱を持っているからだ」と宣言。蘋果日報のジャーナリストは「われわれは職場を守り、懸命に働き、どこまでも誇り高き香港人であり続ける」と誓った。

 だがそれも中国共産党が昨年、香港を「国家安全維持法(国安法)」の支配の下に追いやるまでのことだった。同法に基づき、蘋果日報は廃刊に追い込まれた。その罪は、法の支配や自由市場、情報の自由な流れといった香港の価値観に焦点を当てたニュースや意見を扱った最も人気の情報源であることだった。蘋果日報の終焉(しゅうえん)は、中国政府が国安法の導入によって香港に支配力をふるおうとする中、香港の人々が経験している実態を物語っている。この抑圧的な法律の下で、ベテラン議員を含む数百人が逮捕されている。