日本のキー局の厳しい未来を暗示する出来事が昨年末、海の向こうの米国で起こった。

 三大ネットワークの一つ、NBCを傘下に持つメディアコングロマリットのNBCユニバーサルが、米ケーブルテレビ大手のコムキャストに経営権を委ねることが明らかになったのだ。

 コムキャストは、NBCユニバーサルを所有するゼネラル・エレクトリック(GE)と合弁メディア会社を設立し、GEに65億ドルを支払って新会社の51%の株式を取得することになる。

 人気ドラマや報道番組でメディア界の頂点に立っていたブロードキャストテレビに、もはや往時の輝きはない。ネットメディアの台頭で“視聴率”を奪われ、そこに昨今の不況も重なって、広告収入は激減している。こうした状況下、NBCユニバーサルは、高速ネット通信のインフラでもあるケーブル網を全米に張り巡らせたコムキャストへの事実上の身売りを決断したのだ。

 テレビといえば、最近の米国の若者はもはや受信機自体を欲しがらないとさえいわれる。ニュースはウェブで、番組視聴はストリーミングですませてしまう彼らには、テレビはパソコンほどの必需品ではなくなっている。

 その変化を象徴するのがフールーの台頭だ。フールーはネット上のテレビ局という位置づけで、NBCユニバーサル、メディア王のルパート・マードック会長率いるニューズ・コーポレーション、ディズニーなどが2008年3月に合同で開設。以来視聴者を順調に増やし、ユーチューブの人気に迫る勢いを見せている。