「ビジネスモデル」について、企業はどのように捉え、何をどう実践しているのだろうか。今回から3回に分けて登場していただくのが、温泉旅館やリゾートホテルを国内外33ヵ所で運営する星野リゾートの星野佳路代表だ。星野代表が考える“儲ける仕組み”について、お伝えする。

顧客満足と利益を両立させるため、<br />従業員が正しく判断できる仕組みをつくる星野リゾートの星野佳路代表は、経営学の考え方を積極的に経営に取り入れていることで知られる。星野リゾートのビジネスモデルについて、川上教授が質問する形で対談は進んだ(対談日:11月5日)。

1つの会社に1つのビジネスモデル

川上:星野さんの考える「ビジネスモデル」について、まずは教えてください。

星野:僕はビジネスモデルという言葉自体は、現場ではほとんど使っていません。ビジネスの型になるモデルは1つの会社に1つだと思うし、モデルの精度は上げていくべきだけど、モデル自体が変わっていくのは、あってはいけないと思っているからです。

川上:なるほど。ビジネスモデルは企業や経営学の専門家によっても解釈がまちまちですが、僕が定義する「ビジネスモデル」は、「顧客に満足を、企業に利益をもたらす仕組み」です。顧客を満足させながら、いかに存続するために儲けるかを考えることだと思っています。

星野:それに当てはめるなら、僕の考えるビジネスモデルは「顧客満足と利益を両立させるために、従業員が正しく判断できるようにする仕組み」になりますね。

川上:従業員が正しく判断できるようにするためには、何が必要だと思いますか。

星野:なにより大事なのは、星野リゾートの「競争優位」が何かを認識してもらうことです。現在、星野リゾートは33ヵ所があります(2014年11月現在)。そのスケールメリットを含めて、星野リゾートの運営する施設が他社と比べてどこに競争優位性があるのか、競争優位の状態とはどうあるべきか、どう作っていくかを僕が現場に説明し、同時に、現状とのギャップがどのぐらいあるかを認識してもらいます。
 あとは、現場ごとにギャップをどのように埋めればいいか考えてほしいと思っています。