所有と運営を切り離してスピードを追求

星野:トレードオフに関して付け加えると、星野リゾートは不動産の「所有」と運営会社の「運営」の役割りを切り分けるために、不動産投資信託(REIT)を立ち上げて所有の部分をどんどん手放しています。
 所有は経営のコントロールそのものだから、他社はそんな大胆な戦略に出れない。でも僕は、軽井沢の実家さえもREITに入れました。
 そこまでして運営に特化して得られるものは、ずばり「成長のスピード」です。バランスシートも軽いし資金調達もいらないから、すごく展開が速い。所有を失って成長をとったのです。

顧客満足と利益を両立させるため、<br />従業員が正しく判断できる仕組みをつくる宿泊施設やリゾートの運営に特化するビジネスモデルで経営の成長スピードを重視。

川上:第3ステップの「3 活動間にフィット感を生み出す」というのは? これは平たく言えばトレードオフでどちらかに決めたあとは、製品やサービスに一貫性を持たせろということですよね。

星野:そうです。星野リゾートは、高級宿『星のや』、50室以下の温泉旅館『界』、リゾートホテル『リゾナーレ』などいくつかの業態に分かれていますが、それぞれの現場の各担当者レベルで強化すべきところは強化し、捨てるべきところは捨てるという取捨選択をしてもらいます
 ここまでして初めて星野リゾートの競争優位性も見えてくるし、あるべき姿と現状とのギャップも見えてきますから、翌年の目標も掲げやすくなります。