外資系の攻勢が激しい高級ホテル市場。この分野で起業家精神を発揮し、外資系に対抗しうる高級ホテルや旅館を展開する数少ない日本人の、星野リゾートの星野佳路社長。「週刊ダイヤモンド」9月7日号では、自社の戦略と今後の展開を報じたが、ダイヤモンド・オンラインでは星野氏の特別インタビューを掲載、観光立国を目指す日本に何が足りないのか、政府はどんな取り組みをすべきかなどずばり提言してもらった。

ほしの・よしはる/1960年、長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米コーネル大学経営学修士号取得。91年より星野温泉(現・星野リゾー ト)社長。バブル経済崩壊で打撃を受けた数々の有名旅館・ホテルの再生などを手がけてきた。星野リゾートは現在、全国に31施設を運営している。
Photo by Masato Kato

──日本の観光産業の成長性をどう見ていますか?観光立国を目指して5年前に観光庁を設置するなどしていますが、成果は出ていると思いますか。

 日本は「国の知名度、アクセス、治安」という、世界で観光立国になるための三つの条件をすべてそろえています。

 強い安定した国で、大きな国内需要もあり、まだまだ小さいですがインバウンド(訪日外国人観光客)もある。恵まれた環境にあるし、世界の旅行市場が伸びる中で、重要な位置を確保しています。

 したがって、需要が問題なのではありません。観光産業の真の課題は“生産性”にあります。まぁ僕はずっと、このことを言い続けているのですが(笑)。

 生産性向上のための施策を、経営者と政府の両方が早急にとるべきです。これだけ大きな国内需要を持つ環境なのだから、その需要を使って利益が出る体質を作り、投資を呼び込む。

 投資が進めば、今以上に良い人材が集まるようになるので、再び生産性があります。そうすることで観光立国になり、インバウンドもさらに増える、と考えています。

 今の観光庁は、目先のインバウンド増ばかりに目が向いていて、生産性だったり、もっと国内需要を使って利益を出すことができることだったり、そこの視点が欠けています。