「きかんしゃトーマス号」の大井川鐵道、倒産危機を乗り越えた前社長が「最後の日」に語ったこと
高瀬文人
過疎化による乗客減、台風などの災害による寸断、親会社の撤退……全国のローカル鉄道が直面する難題に約50年前から立ち向かい、経営危機を乗り越…
2024.8.16
大井川鐵道は、半世紀近く前から蒸気機関車(SL)保存列車を走らせるなど、鉄道を観光地へ行く手段でなく「目的」とするパイオニアだ。いま、全国各地の鉄道が運行する「乗車そのものを楽しむ」列車のルーツは大井川鐵道にもある。2014年からは、「きかんしゃトーマス」の商品開発によって、SL列車を新しい「コンテンツ消費」の文脈に書き換えて成功した。
一方で過疎化による乗客減、ツアーバス事故規制による収入減や東日本大震災、コロナ禍と数々の試練に見舞われ、そして2022年台風15号の被害で寸断された路線はいまだ復旧できない。大井川鐵道はいま苦悩の中にある。
半世紀前から今に到るまで、大井川鐵道は「課題先進鉄道」だ。最も運輸収入を上げている鉄道であるJR東日本ですら人口減少社会を見越した「脱鉄道化」に取り組む中、大井川鐵道は「鉄道しかない」弱みを強みに変える歩みを続けてきた。全国の鉄道、そして過疎地域の課題と希望がここにある。本連載では、大井川鐵道の半世紀にわたる苦闘を、特にこの10年あまりにスポットを当てる。そして、新しい体制での大井川鐵道の課題を探りたい。