草間雅行(くさま・まさゆき)
東京都市大学付属中学校・高等学校副校長兼教頭
1963年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業後、埼玉県公立校教員を経て、89年から現任校の理科(化学)教員として勤務し、2010年教頭、21年4月から副校長も兼務。
東大合格実績躍進のカギは“類”と帰国生
――東京大学合格者12人、おめでとうございます。昨年は7人でしたから大躍進ですね。
草間 どこかで2ケタ合格を、と思っていましたが、なんとか実現しました。12人のうち、11人は現役生です。残る1人は私立大を卒業のタイミングで受験したそうです。学部の3~4年時が新型コロナ禍で授業もなく、興味を持った分野で再び学びたいと思ったそうです。
合格最低点にあと0.7点とか0.9点足りなかった、文Iなら受かったのに文IIIに切り替えて涙をのんだという例が今年もありました。浪人すればもっと合格者が増えると思いますが、本校の卒業生の中には大学院で東大に進む生徒もいますので、現役で合格した大学に多くは進学しています。
この3月の卒業生は、II類(最難関国公立大)とI類(難関国公立大・私立大)という類制になってからの4期生でした。類制を設けてから、上位の成績の生徒が入ってくれるようになりました。さらに、帰国生の異文化体験を通じた国際性や英語力も周りの生徒にいい影響を与えてくれました。その意味で、学校改革の入り口の部分がうまくいったことが今回の成果に結び付いたと思います。
――生徒からすると、学校の設計が非常に明確でした。ところで、こうした改革に対する、学校内部からの危惧の声はありましたか。
草間 入学段階での“類”というコース分けには、期待も不安もありました。コース制のある学校は受けさせたくないという保護者もいらっしゃいます。
ただ、類制の導入以前にも、中3から習熟度別のクラス編成を校内で行ってきました。I類に相当する当時のスタンダードクラスについては、生徒のボトムアップを図ることを心掛けていました。現在も、その点は譲らないように考えています。
――類ごとの教員の配置はいかがでしたか。
草間 II類は、新人の先生がいきなり受け持つのは厳しいので、II類にはベテランの先生を、と思いました。しかし、中には基礎力を伸ばすのが得意なベテランの先生もいらっしゃいます。そこは、各教員の適性を配慮しながら進めました。
――類の違いにより学校が二つに分かれるという危惧はありましたか。また、その点で何か対応されましたか。
草間 部活動や学校の行事は、類を問わず一緒にやっています。君はII類だから、I類だからなどと両者を区別するような発言をしないよう、教員からの声掛けには注意しました。
――類によって、授業の進度も異なるのですか?
草間 授業が進むペースは同じですが、類の違いは、余った時間に行う発展的な学習など、学びの深さにあります。
中1と中2では、II類が2クラスで、I類が4クラスです。その1年間の成績によりクラス替えを行います。外部模試の結果を見て、成績が良くなってきたと判断した時には、中2から中3もしくは中3から高1に上がる学年末に、II類を増やして3クラスにすることもあります。また、II類のクラスも、習熟度によりαとβに分ける場合もあります。
――そうしてやる気を引き出しているのですね。
草間 高2から高3に進む段階では、類ではなく、志望先の大学に合わせて、国公立大と私立大の文系と理系に分けています。本校の場合、国公立大に行きたい生徒はどうしても人数が多くなります。