井出 武
東京カンテイの調査では、10年前に新築分譲されたマンションの中古価格が2020年に初めて、新築時を上回った。分譲時はリーマンショックで価格が低かった面もあるが、やはり現下の中古価格の高騰が大きく影響している。上昇率が高かった上位20駅と、上昇が見られた首都圏の詳細なマップとともに解説する。

「コロナ禍でもマンション市場は大きく変わらない」――。多くの人がそう思っていて、そのように市場が反応しています。このような共通認識の醸成がなかった1回目の緊急事態宣言(2020年4月~5月)と2回目の宣言時(2021年1月~3月)では、マンション市場で表れた数値が大きく異なりました。特に2回目の宣言期間中は新築マンションの分譲戸数は大きな変化が起こらず、中古マンションの流通戸数が2月に著しく回復したことからも、不動産に対するマインドの変化がうかがえます。

マンション市場では都心部を中心に、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、資本力の強い大手デベロッパーの寡占化が進んだ。その結果、供給戸数が減っても、価格上昇と販売期間の長期化で売り上げを確保し、その地位はますます盤石なものとなっている。金利動向など不安要素はあるものの、こうした構造は簡単に変わりそうにない。

新型コロナウイルスの感染拡大で下落するかに思われた都心のマンション価格は、むしろ上昇した。中古マンション市場を見れば、買い手が減らなかった半面、売り手には売り急ぐ理由がなかったのだ。東京カンテイの井出武・上席主任研究員が、詳細なデータから実証的に論じる。
