東京カンテイの調査では、10年前に新築分譲されたマンションの中古価格が2020年に初めて、新築時を上回った。分譲時はリーマンショックで価格が低かった面もあるが、やはり現下の中古価格の高騰が大きく影響している。上昇率が高かった上位20駅と、上昇が見られた首都圏の詳細なマップとともに解説する。(東京カンテイ上席主任研究員 井出 武)
リセールバリューが初の100.0超えを記録
首都圏、近畿、福岡で中古>新築価格
東京カンテイでは、10年前に竣工した新築マンションの分譲価格と現在の中古マンション価格を同一物件同士で比較する形でデータの抽出を行い、駅ごとの平均値を出しています。現在の中古マンション駅別平均坪単価を、10年前の新築時の平均坪単価で割り算することで、「リセールバリュー」を求めることができます。求め方は以下です。
リセールバリュー=現在の中古マンション平均坪単価÷10年前の新築マンション平均坪単価×100
東京カンテイでは、データの客観性を重視するため、新築マンションをすべて集計して平均値も求めるのではなく、新築マンションと中古マンションの両方がそろうマンションのみを対象にしています。このような手法を採用しているのは、例えば、10年前に非常に高額なマンションが分譲されたが、現在そのマンションから中古マンションの売り事例が発生していない場合、新築マンションの平均坪単価のみが高くなってしまい、その駅のリセールバリューが過小な値になります。こうしたことを避けるためです。
このリセールバリュー(以下RVと表現)は2004年から集計していますが、過去に首都圏平均、近畿圏平均など圏域の平均値が100.0を超えたことはありませんでした。しかし2020年のデータでは調査開始以来はじめて100.0を超えました。具体的なデータは以下です。
首都圏 101.9%
近畿圏 101.1%
中部圏 91.7%
福岡県 101.0%
2019年のデータは、
首都圏 94.3%
近畿圏 94.0%
中部圏 85.9%
福岡県 99.3%
と、全件域で100.0を下回っていました。このようなRVの急上昇は、今から10年前に新築分譲されていたマンションの価格(2009年~2011年竣工物件が対象)が、リーマンショックの影響で下落していた時期に当たることも要因に挙げられますが、最も大きく影響を与えたのは言うまでもなく、ここ数年の中古マンション価格の上昇です。