コロナ禍にもかかわらず価格高騰が続く都市部のマンション市場。とりわけ新築物件では、価格が下がりそうにない構造的な変化が、コロナ禍の前から進んでいた。なぜ今後も価格高騰が続く可能性が高いのか、詳細なデータから明らかにする。(東京カンテイ上席主任研究員 井出 武)
リーマン前と異なる売り手の顔ぶれ
巨大資本が実現した“売り方”とは?
(上)では、新型コロナウイルスの感染拡大の中、中古マンション価格がなぜ上昇したのかについて分析しました。新築マンション価格についても、当然ながら同じロジックが当てはまります。従って、価格が下がるときは、
●買い手がいなくなってしまう
●マンションの売り手(=不動産会社)が価格を下げる
●資金回収を急ぐあまり供給過剰に陥る(売りたい人が買いたい人を大きく上回る)
という状況が起こったときです。ところがこのロジックは、新築マンションの業界において過去に大きな変化があったため、現在では、以前の市場とは異なる動きがあったり、あるいは以前は見られた動きが見られなくなる、といった傾向があります。これは非常に大きな変化です。
リーマンショックが起こった2008年9月以前の新築マンション市場では、多くのデベロッパーが群雄割拠していました。その中には、資本力で劣っていたり、短期間マンションを販売して資金を回収し、次のプロジェクトの資金を調達するという、いわば自転車操業的なデベロッパーが多く存在していました。
しかし金融危機とリーマンショックによって、これらの中堅デベロッパーの多くが経営破綻したり、他の資本が入って業態を大きく変更させて、新築マンション市場から撤退しました。
現在、新築マンションを分譲しているのは、三菱地所や三井不動産など「メジャーセブン」と呼ばれる、財閥系を含む大手7社のほか、NTTや電鉄などのインフラ、商社系など、資本力に優れ、分譲マンションだけでなく総合不動産業や、非常に安定した本業を営む会社が多くのシェアを獲得するに至っています。