都心のマンション写真はイメージです Photo:PIXTA

「コロナ禍でもマンション市場は大きく変わらない」――。多くの人がそう思っていて、そのように市場が反応しています。このような共通認識の醸成がなかった1回目の緊急事態宣言(2020年4月~5月)と2回目の宣言時(2021年1月~3月)では、マンション市場で表れた数値が大きく異なりました。特に2回目の宣言期間中は新築マンションの分譲戸数は大きな変化が起こらず、中古マンションの流通戸数が2月に著しく回復したことからも、不動産に対するマインドの変化がうかがえます。(東京カンテイ上席主任研究員 井出 武)

1回目の緊急事態宣言は様子見する時間となっていた

 2020年春の1回目の緊急事態宣言では、マンション価格が大きく変動しなかったことは前回指摘しました。一方で、新築マンションの供給戸数は一時的にせよ、かつて経験したことがないほど大きく落ち込みました。

 これは、営業自粛要請が出たことで、不動産の営業店舗が軒並みお店自体を閉めたこともありますが、それよりも、不動産を売買しようとした人が外出を控えたことが大きかったと考えます。

 昨年の緊急事態宣言時は、通勤時間帯には乗るというより「押し入る」必要があるくらい混雑していたJR山手線でさえ空席があって座れるなど、正月やお盆の時期さえめったにないような光景となりました。会社員も通勤せず自宅で仕事をし、「公共交通機関を使わない」ことが“当たり前”となりました。通勤以上に、外食や旅行という「日常」も失われました。街から外国人観光客が消えました。こんな世の中になるとは、誰も想像しなかったでしょう。

 不動産市場、とりわけ新築マンションの営業や売買の現場は、人同士の対面接触に大きく依存して成り立っていることがあらわになりました。インターネット経由の分譲は、手段としては用意されていましたが、契約行為を完結させるまでの準備は整っておらず、法整備も終わっていませんでした。

 この間、契約したくてもできなかった人がかなり存在したと思います。このような人たちが、次のページの図のように、緊急事態宣言解除後の昨年6月に一気に動き出したのです。