三井住友系の有力第2地銀、関西アーバン銀行が主導した大規模老人ホームのオフバランス化をめぐり、受け皿会社で不透明な支出が発覚。逮捕歴のある問題人物が関与していたにもかかわらず、同行は肩代わりまでして多額の融資を強行した。「異常融資」疑惑は上場企業の不正会計にも広がり、底なしの様相を呈している。
昨年8月27日、大阪市内にそびえる関西アーバン銀行本店の会議室に8人の男たちが集まっていた。協議に臨んだのは、関西アーバンの岸本智専務と脇阪幸治常務執行役員、あおぞら銀行の担当者3人、名古屋市内のコンサルティング会社社長、それに中堅ドラッグストア富士薬品(さいたま市)の専務と同社の窓口役を務めていた都内の不動産会社社長だった。
8人が詰めの協議を行なったのは、新興不動産会社ゼクスが兵庫県芦屋市に建設した大規模有料老人ホームのオフバランススキームについて。受け皿となる特定目的会社(SPC)をコンサル会社で用意、そこに富士薬品の優先出資を注入して、関西アーバンとあおぞら銀が協調融資を行なう方向でこの日までに協議は進んでいた。
だが、土壇場であおぞら銀はこの話から降りる。協議中に問題人物の関与が明らかになったからだ。にもかかわらず、関西アーバンはオフバラ化に固執、その日のうちに肩代わりを決め、90億円の融資を強行した(下図参照)。
案の定、このスキームは迷走を始める。富士薬品が調査に乗り出すと、SPCの不透明な支出が判明、財務状態は壊滅的だった。ほかの不動産事業でも失策が続いていた実務責任者の富士薬品専務は今年2月に辞任、四ヵ月後に自殺した。「責任感の強い人。社内では犯罪者呼ばわりされていた」と前出の不動産会社社長は話す。