郵政民営化から4ヵ月。2月22日、総資産100兆円を超えるかんぽ生命保険と民間生保最大手で総資産52兆円を誇る日本生命保険の業務提携が発表され、業界内で話題を呼んでいる。

 その内容は、日生がかんぽに対し、かんぽが今後郵便局を通じて販売していく医療保険やガン保険などの開発を支援することに加え、保険の引き受けから保険金支払いまでの事務管理システムの構築を支援することや、保険販売時のマーケティングデータやノウハウを提供するといったもの。かんぽにメリットが大きい提携内容だ。

 そこにはかんぽ特有の事情が絡む。92年ものあいだ、かんぽが取り扱ってきた商品は限度額が1000万円までなどと制約が多い簡易保険だ。この保険は通常の生命保険と違って、職業による制約がないため誰でも加入できたり、簡単な告知をすれば医師による審査が不要などと、文字どおり簡易な保険である。しかもそのうちの大半が、貯蓄性の高い養老保険であり内容も至ってシンプルだ。

 そのため、かんぽは複雑な保険を引き受けるノウハウや保険金の支払い体制などのシステム面で、民間生保より大幅に後れを取っている。しかも、その養老保険は低金利の影響で販売は下落の一途。数年後に株式上場を義務づけられているかんぽにとって、売れ筋の医療保険やガン保険など新商品の取り扱いが急務。しかし、「商品は開発できても、事務システムが追いつかない」(関係者)というわけだ。そこに日生が助け船を出したかたちとなった。

 また、ある関係者は「今夏に郵便局で販売が予定されている民間生保の商品も関係している」とも言う。その商品とはアフラックのガン保険である。

 本来、郵便局にしてみれば同じ郵政グループのかんぽの商品を売りたいところだが、いかんせん、かんぽのラインナップにガン保険はない。このことから、かんぽは日生の助けを得て、早期にアフラックに対抗できるようなガン保険の開発に着手すると見られる。

 ところで一方の、日生にとってのメリットは何か。

 商品開発の支援などで手数料等は発生しないため直接的なメリットはない。だが、いずれ日生と同じシステムがかんぽの基幹システムと統合すれば、「首根っこを押さえたも同然」(大手証券アナリスト)。つまり、今後の商品開発やかんぽの100兆円を超える資産の運用などで、日生の影響力が高まることになる。

 かんぽを介してではあるが、郵便局に対して間接的な影響力が増すなど、“将来への布石”を打ったといえよう。

 とはいえ、郵政グループの販売の要である郵便局の事務とりまとめ会社は住友生命保険である。また、かんぽの会長は東京海上日動火災保険出身の進藤丈介氏であり、郵便局会社にも同社の人材が地歩を築いているという。かんぽの事務システムを押さえたことで、一気に抜きんでた存在となった日生だが、まだまだ“群雄割拠”の状態が続きそうだ。日生の次の一手に注目が集まっている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)