調査報告書を発表し会見する第三者委員会調査報告書を発表し会見する第三者委員会=3月31日午後、東京都港区 Photo:SANKEI

「あれは説明だ、謝罪ではない」。1月の”閉鎖会見”後、自局の報道番組で経営陣が「謝罪」したとテロップが流れると、フジテレビの港浩一社長(当時)は怒りの声を上げた――。第三者委員会調査の結果が3月31日、ようやく発表された。事態の核心部分であったトラブルについて、女性アナウンサーが元タレント・中居正広氏から「『業務の延長線上』における性暴力」を受けたと認定し、フジテレビの一連の対応を改めて非難した。特に、危機管理失敗の象徴とされたのが、”閉鎖会見” で女性への謝罪を頑なに拒んだ港氏の独善的な態度だ。フジテレビはどこでボタンを掛け違ったのだろうか? 読売新聞記者を経験後、三菱自動車広報部で危機管理を担当した広報コンサルタントが、フジテレビ問題を総括する。(広報コンサルタント 風間 武)

初動対応の失敗を招いた
港氏のこだわり

 フジテレビの報道番組「Live News イット! 」では1月17日の会見後、ニュース中のサイドテロップで「謝罪」との文字を表示した。これを見た港氏は「あれは説明だ、謝罪ではない」などと怒りを示した。トップのこだわりは報道担当取締役を通じて報道局へ伝えられ、その後は謝罪との言葉は避け「説明」と表記されるようになったという。

 港氏は会見冒頭で、「一連の報道により、視聴者の皆様を始め、関係者の皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしておりますこと、および、現在まで弊社から説明ができていなかったことについて、お詫び申し上げます」と前置きしている。これを受けて他のメディアも当たり前に「謝罪」と報じていたから、自局番組への訂正指示は行き過ぎと言わざるを得ない。

 これに先立つ昨年12月27日、フジテレビは相次ぐ週刊誌報道を受け、社員の関与を否定するコメントをウェブページに掲載していた。実はここでも、文言を巡って、港氏のこだわりが現場を振り回す場面があった。

 報道対策チームが盛り込んだ、「出演者などステークホルダーとの関係性のあり方については改めて誠実に向き合い、弊社のコンプライアンスガイドラインの順守により一層努めてまいります」との一文がやり玉にあがった。

 文春記事を否定するためのリリースであるのに、なぜ誠実に向き合いますとの文言を出す必要があるのか、と一時は削除を主張したというのだ。

 第三者委員会は、「報道チームの判断は正しかった」としている。当時の報道ではすでに、社員の関与は問題のごく一部とされ、業務の延長線上に存在する被害だと解釈されるか否か、その後のフジテレビの対応に問題があったか否かなどが焦点となっていたからだ。