「正直、女に生まれてりゃよかったな、と思うんですよね」

 夜更けの居酒屋。中田堅二課長と飲んでいた部下の若手新司クンは、唐突にこんなことを言い出した。

「たとえばうちの氷河秀子さんって、チームでは紅一点だし、上からもお客さんからも、何かと注目されてるじゃないですか。ミスしたときだって、オレに比べると課長の追及が甘いような…。一番うらやましいのは、結婚して専業主婦になれるってことですよね。ちくしょー。オレも高収入の男の妻になって、左うちわで暮らしたいスよぉ」

 「バカ野郎!氷河クンは女性だからって甘えてなんかいないぞ。男以上に仕事に励んでいる。甘えているのはおまえのほうだ」。

 そう言いかけて中田氏は言葉を飲み込んだ。契約社員の若手クンが、それなりに頑張っているにもかかわらず、薄給なのを思い出したからだ。

ちやほやされる新人女性、
放置される男性

 女性はズルイ。女性が羨ましい――。若い男性の口からそんなつぶやきが漏れ聞こえるようになった。街に出れば、電車の女性専用車両や、映画館やレストランの「レディースデー」などがあり、特別扱いしてもらえる。職場では、重労働をしなくてすんだり、制度があれば生理休暇をとったりもできる。もっとも、活用できるかどうかは職場の雰囲気によるが。

 「うちは男が多いせいか、上司の覚えがめでたいのは絶対女性のほうなんです。とくに新人のうちは、すごくちやほやされていますね。ハードな仕事だけに、辞められたら困る、というのがあるかもしれないけど。それに比べ、新人の男は完全放置です」(IT系 31歳男性)

 「見た目で自分を印象付けられるからいいですよね、女性は。はなやかな色を着こなしたり、化粧や髪型に凝ったりして。そういう要素って、ビジネスではけっこう重要な気がします。自分ですか?女房子どもを食わせるのと、家のローンで手いっぱい。身だしなみにカネはかけられないですね」(出版系 34歳男性)