
世界197カ国に9500以上のホテルを展開し、2億2000万人以上の会員を抱えるマリオットインターナショナル。この巨大組織はどのようにして目標収益の6倍を達成したのか?マリオット・インターナショナル VP 兼 マーケティング オーケストレーション担当グローバルヘッドのヒラリー・クック氏が明かしたのは、最新技術の活用というよりむしろ、組織内に潜むムダと非効率を徹底排除した地道な改善の道のりだった。3月18日~20日にラスベガスで開催された「Adobe Summit 2025」での講演を元に、クック氏の取り組みを紹介する。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
マリオットが直面していた壁
冒頭、クック氏が「数千人の前で話すのは今回が初めて。自信がなくてもあるふりをするようアドバイスされてきたが、私はうまく見せるのが得意ではない」と明かすと、会場からは声援や指笛が鳴り響いた。マーケターコミュニティのあたたかさを垣間見た瞬間だ。
マリオットは、197カ国に9500以上のホテルを展開し、最高級のラグジュアリーホテルから手頃なセレクトサービスまで30以上のブランドを擁する世界最大級のホテルチェーンだ。都市部からリゾート地まで1万を超える旅行目的地をカバーし、年間350以上のグローバルキャンペーンを同時進行している。

クック氏が直面してきたのは、マーケター、ひいては商売に携わる人なら誰もが抱える課題だ。「マーケターは必要なときに最適なコンテンツにアクセスできているか」「手作業や非効率的なプロセスがスピードを阻害していないか」「顧客は適切なチャネルを通じてブランドと接点を持てているか」「正確に効果測定できるデータ基盤は整っているか」――こうした問いに常に向き合ってきたという。