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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

日本企業を縛る米国流SOX法に無理に付き合う必要はない

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第7回】 2008年8月26日
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 先日、日本商工会議所北カリフォルニア支部が主催し、シリコンバレーで開かれたJ-SOXに関する勉強会に出席した。J-SOXは米国SOX法の日本版というべきもので、2009年3月期決算から導入される。J-SOX法の適用対象は日本企業であるが、在米子会社にとってもまったく無関心ではいられないので勉強会が開催されたのだ。

 2002年7月に発効したSarbanes-Oxley法(略称SOX法)はエンロン事件やワールドコム事件など1990年代末から2000年代初頭にかけて米国で頻発した不正会計問題に対処するために制定された法律である。財務諸表が適正に作成されていることを検証する社内管理体制の評価まで含む広範、且つ、厳しい規制である。

 この法律は罰則も異常に厳しい。CEO(最高経営責任者)とCFO(最高財務責任者)は決算内容・社内管理体制ともに適正であることの宣誓書を提出しなければならない。もし、嘘の宣誓をすれば、罰金に留まらず、5年から20年の禁固刑が科される可能性もある厳しい法律である。

SOX法への対応費用は
米国全体で150兆円

 SOX法はアメリカで施行されて数年経つが、いまだに賛否両論が渦巻く問題含みの法律である。賛成派は、この法律の導入によって経営者が襟を正すようになり、決算内容の信憑性が格段に上がり投資家の保護が図られるようになったと力説する。その証拠に決算の過年度修正が大幅に減ってきたし、社内管理体制の不備指摘件数も大幅に増えた後、減ってきたとしている。

 一方、反対派は「企業にとってこれが過重な経済的負担となり、上場する意欲が失われてしまった」「外国の企業がアメリカの証券取引所に上場するのを避けるようになった」ことに強い懸念を示している。

 SOX法に対応するための費用は、ある調査レポートによると、米国企業全体で1兆4000億ドル(約150兆円)にも達するという。一企業あたり平均すると290万ドル(約3億円)掛かっている。しかしこれを負担率で見ると、売上50億ドル以上の大企業では売上に占める比率が0.06%なのに対し、売上1億ドル未満の中小企業では2.55%と重い負担率となる。

 アメリカでは多くの企業がSOX法を廃止するロビー活動を強力に展開している。SOX法の監督機関の合憲を問う訴訟まで提起されている。アメリカが今後この法律をどこまで押し通すのか先行きは不透明である。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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