3月末に公表された「フジテレビ問題」に関する第三者委員会の調査報告書は衝撃的なものだった。報告書では、発端となった中居正広氏の問題以外にも、さまざまな企業倫理に反すると思われる行為が記されていた。ただ、深刻な問題であったとしても、公認会計士の視点で見ると、「開示すべき重要な不備なし」と判断される場合がある。どういうことなのか。(公認会計士 白井敬祐)

大批判された「スイートルームの会」問題が
会計上は“おとがめなし”になる可能性

中居正広Photo:SANKEI

「38万円程度の不正なら、内部統制上は問題なし」

 この言葉に、違和感を覚えませんか?

 元タレントの中居正広氏と元社員の女性とのトラブルに端を発したフジテレビの問題で、第三者委員会は3月31日、調査報告書を公表しました。約400ページにも及ぶ報告書の内容は衝撃的なものでした。

 まず、中居氏と女性とのトラブルは、「『業務の延長線上』における性暴力であったと認められる」と判断されました。そしてそれだけでなく、信じがたいさまざまな問題が明るみになったのです。

 その一つが、「スイートルームの会」問題。報告書によれば、フジテレビの編成幹部が関与して約38万円のスイートルーム代を「番組のロケ等施設使用料」という虚偽の名目で会社経費として計上していました。そして、その会合ではセクハラ行為があったと第三者委員会は判断しています。

 明らかに企業倫理に反するこの行為。しかし、公認会計士として冷静に判断すると、この事態は現行の内部統制報告制度(通称:J-SOX)の枠組みでは、「開示すべき重要な不備なし」と評価される可能性が高いのです。

 どういうことなのか。

 今回は、フジテレビ問題を通じて「内部統制の本質」と「会計監査の新たな可能性」について考えてみましょう。