ビール大手5社が7月10日に発表した2009年上半期の「ビール系飲料市場シェア」は、キリンビールが37.5%と、アサヒビールの36.9%を上回り、上半期では3年ぶりの首位となった。

 この逆転劇の原動力は、新ジャンル、いわゆる“第三のビール”がビールを浸食する「カテゴリーシフト」だ。

 実は、市場ではこの「カテゴリーシフト」が予想以上に進みつつある。

 この上半期、ビール系飲料におけるビールのシェアは、史上初めて50%を割り込んだ。出荷量自体も、現行方式で統計が始まった1992年以来、最低を記録した。

 それとは裏腹に、“新ジャンル”のシェアは29.1%と対前年同期比で6.2ポイントも上昇し、史上最高を記録している。通年では「シェア3割を超える」とも見られているほどだ。

 酒税が低く割安な新ジャンルは、消費者の節約志向を受けて拡大する一方であり、それに対して割高なビールは縮小に歯止めがかかりそうにない。

 一方で、同じく酒税が低く割安で人気を集めていた“発泡酒”も、新ジャンルの登場により、糖質やプリン体をカットしたものなど機能性をウリにした商品が主流となっており、固定客がついている。

 つまり、「ビールだけがジリジリとシェアを落としている」という構図になっているのだ。

ビールを売り場の片隅に追いやった
「新ジャンル」の威力は想像以上!

 かつてスーパーマーケットの酒売り場や酒ディスカウンターの売り場の“一等地”を占めてきたビールは、今では隅に追いやられており、毎月のように新商品が投入される新ジャンルや発泡酒がそれに取って代わっている。

 そんな状況下、新ジャンルでは「のどごし」、発泡酒では「端麗」という不動のトップブランドを擁しているキリンは、消費者のカテゴリーシフトの追い風をうけて、一気にシェアを伸ばした。

 当初、「新ジャンルはせいぜい20%が上限だろう」と、ここまでカテゴリーシフトが進むと見ていなかったキリンにとっては、まさにうれしい誤算だ。