トヨタアルファードのシフトレバートヨタアルファードのシフトレバー Photo:Adobe Stock

クルマのシフトレバーには「B」「D」「R」「S」「M」など、アルファベットや数字で書かれた「レンジ」が付いています。普段よく使うもの以外は何に使うのか分からない、レンタカーやカーシェアで普段と違うクルマに乗ったら見慣れないレンジがあった、という方もいるのではないでしょうか。今回は、シフトレバーに書かれたレンジはどういう意味で何の略なのか、そしてそれぞれのレンジに適した使用シーンについてご紹介します。(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)

「2」や「L」が、今は「B」や「S」に置き換わった

 クルマのシフトレバーには、いくつかの「レンジ」が用意されています。D(ドライブ)、P(パーキング)、R(リバース)などは日常的に使うものですが、B(ブレーキ)レンジやM(マニュアル)レンジ、S(スポーツ)レンジは使ったことがないという方も多いのではないでしょうか。

 一般的なガソリンエンジンのAT車には、「R-P-D」のようにシフトレンジが並んでいます。近年は減ってきましたが、「D」の下に「2(セカンド)」や「L(ロー)」の文字が並んでいるクルマも多くありました。

 これらは、下り坂や上り坂を走行する際に使用するためのもの。下り坂では、アクセルペダルを踏んでいなくても速度が高くなりがちですが、ブレーキペダルを踏みながら減速を長く続けると、ブレーキシステム全体が過熱し、ブレーキペダルを踏んでもブレーキが利きにくくなる「フェード現象」や「ペーパーロック現象」が発生してしまいます。これを防ぐため、「D」から「2」へシフトを変えることでエンジンブレーキを強く利かせ、フットブレーキを使うことなく減速をさせるのです。「2」でも加速してしまう急な下り坂では、「2」の下にある「L」にシフトを変えることで、さらに強いエンジンブレーキを利かせることができます。

 また上り坂でも、長い斜面では徐々に車速が低下していってしまい、Dレンジのままだとキックダウンが頻繁に行われることで車速が乱高下してしまいます。これを防ぐため、「2」へシフトを変えてギアを固定し、車速を安定させやすくするために使われます。

ホンダフリードのシフトレバー。D(ドライブ)レンジの下に、B(ブレーキ)レンジが並ぶホンダフリードのシフトレバー。D(ドライブ)レンジの下に、B(ブレーキ)レンジが並ぶ Photo:Adobe Stock