ファミリーマートが今年夏頃を目処に、中国・上海における店舗への商品配送を、1日1便から2便へ強化する。設立した米飯などの専用工場が4月に稼働して商品の供給体制が整ったことなどを契機に、中食需要のさらなる取り込みを狙う。
コンビニエンスストアにとって、自社で開発を行う弁当などの中食商品は、最大の差別化要因だ。しかも中食商品は他商品に比べて粗利が高く、収益性のアップにも貢献する。しかしこれまでの1便では、夜になると商品が欠品してしまうことがあった。
2便にすることによる売り上げの拡大幅は未知数だ。ただし、ファミリーマートの中食商品は、すでに売り上げ比率が全体の約35%を占めるなど支持を得ている。2便による商品発注の精度の向上や機会ロスの削減で、一定の効果は期待できるだろう。
ファミリーマートは、09年8月に海外店舗数が国内店舗数を逆転した。国内は飽和が近づくと見ており、今後も海外での展開に注力する考え。そのうち中国では、2015年度4500店の展開を目指す。同社上海の店舗数は、10年2月末で287店。今期中は197店純増の、484店にまで拡大する計画だ。
北京に続き、昨年上海に初めて出店したセブン-イレブンも、粛々と出店を拡大している。10年2月末に13だった店舗数は、今年4月末には24店舗に拡大した。
そして、セブン-イレブンの強みもまた中食商品にある。箱型の弁当もあるが、他チェーンとの大きな戦略の違いは、北京同様、店内調理を行っていることにある。
店内調理は、朝は揚げパンや豆乳、昼は約10種類のおかずから2種類を選んでご飯にのせる丼、夜は家庭の食卓にも並べられる惣菜など、時間帯によって扱う商品が変わる。ニーズに細かく対応することで、平均日販は地場コンビニの約3倍、日系コンビニの約2倍に上っている。
96年と早期に進出し、現在約300店舗を展開するローソンは、上海っ子におでんを広めた実績がある。紙コップに出汁を入れ、串に刺して売るという中国独特のおでんスタイルを編み出した。
上海には今、約4000店のコンビニがひしめいているという。日系コンビニの競争激化のみならず、上海の地場コンビニも攻勢をかけてくるだろう。中国に詳しいサーチナ総合研究所によれば、たとえば「好徳」「可的」のコンビニを展開する农工商集团便利店の店舗数は09年、上海だけで1551店もある。数で日系コンビニに水を開ける企業もあるのだ。
現地化しながらも、日系コンビニの強みを生かしたビジネスモデルの確立が求められている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)