カリフォルニア州ロサンゼルスにあるセブンイレブンPhoto:Eric Thayer/gettyimages

米国セブンイレブンの業績が振るわない。2025年2月期は、営業利益が前年同期比76.3%に落ち込むと予想する。セブン&アイHDは、インフレの影響やガソリン価格の下落が原因だというが、果たして――? 米国セブンは、強力なライバルとの競争、業態転換とそのための投資、そしてブランド・アイデンティティの揺らぎに直面している。(桃山学院大学経営学部教授 小嶌正稔)

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が新社名を発表し、コンビニエンス事業への集中に舵を切った。国内ではコンビニ市場の飽和感がある中、海外事業に活路を見出すという。紛れもなく鍵を握るのが、売上高を示す営業収益、営業利益ともに全体の約半分をも占める米国セブンイレブン(7-Eleven,Inc.、本稿では「米国セブン」)である。

 ところが、米国セブンの2025年2月期上半期業績は、チェーン全店売上高が前年同期比98.0%、営業利益は同73.5%と厳しいものだった。そして、通期予想を見る限り、下期も上向く気配がない(営業収益は同95.9%、営業利益は同76.3%予想)。セブン&アイの説明によると、これは米国セブン特有の問題ではなくインフレによる消費者の買い控えやたばこを含むニコチン製品の売り上げ減、ガソリン価格の下落などが重なった業界全体の流れだという。

 しかし筆者が分析するに、米国セブンは、強力なライバルとの競争、業態転換とそのための投資、そしてブランド・アイデンティティの揺らぎに直面している。

 セブンイレブンは、情報化とマーチャンダイジングのイノベーションによってコンビニ業態を革新し続けてきた。例えるなら、今ではクジラ(巨大チェーン)となったが、元々はあくまで小さな魚(地域密着型店舗)の集まりだ。先頭の魚を追う小魚の群れは、形を変えながらもクジラの形を維持することで自らを守ってきた。ところが、急な業態転換によってその群れが、バラバラになろうとしている。

次ページ以降の目次はこちら
・「全米ブランド」は、なかなか育たない?
・M&Aによる店舗獲得競争は、もう古い?
・大型化とブランドアイデンティをどのように保つ?
・DX投資がコンビニを追い詰める?