新型コロナ禍の終息による外出の活発化やインバウンドの回復を追い風に、アパレル業界は復調傾向にある。一方で、原材料費の高騰やインフレなどの直撃でアパレル企業の淘汰も進んでいる。特集『2025年「倒産ドミノ」勃発!?倒産危険度ランキング【上場434社・最新版】』の#4では、アパレル業界の倒産危険度ランキングを作成。“危険水域”にランクインした29社の顔触れを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 澤 俊太郎)
EC強化にOMO、業態も大きく変容
アパレル29社の倒産危険度ランキング
小売業界などと同じくアパレル業界も、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた。だが、コロナ禍の終息に伴って全体的には復調傾向にある。ただし、コロナ禍をきっかけに消費行動は変容した。アパレル企業は生き残りを懸けてさまざまな道を模索している。
例えばインターネット通販では、それまで「ZOZOTOWN」などの大手プラットフォームに頼ってきた販売方法を変え、自社サイトから購入を促すEC事業を一層強化する企業も増えた。
コロナ禍で実店舗での販売が落ち込んだことが背景にはあったが、それだけではない。あるアパレル企業関係者は「ZOZOが扱うブランドが中価格帯から低価格帯に移行し、若者離れが出ていた。そこにコロナ禍が直撃し、自社ECに注力するきっかけとなった」と打ち明ける。
実店舗に顧客が戻り始めた昨今では、オフラインとオンラインを融合させるOMO(Online Merges with Offline)も盛んになってきている。
例えば、オンワードホールディングスでは、自社サイトから商品を実店舗に取り寄せ、日時などを予約して試着できる「クリック&トライ」というOMOサービスなどが好調だ。2024年3~8月期の国内EC売り上げは前年同期比5.5%増の235億9300万円となった。EC売り上げに占める自社サイト比率は85.5%と高い水準を誇る。
コロナ禍後に事業環境が大きく変わる中で、アパレル業界では勝ち組と負け組が鮮明になりつつある。
勝ち組の最たる例が、「ユニクロ」や「GU」などを展開するファーストリテイリングだ。同社が10月に発表した24年8月期決算では、売上高は3兆円を突破、営業利益は5000億円の大台を超えた。柳井正会長兼社長は「売上高10兆円」の目標を掲げた。
一方、コロナ禍の影響を引きずる企業も少なくない。2000年代に一世を風靡した服飾雑貨のサマンサタバサジャパンリミテッドは、ブランド力に陰りが見え始めていたタイミングでコロナ禍の追い打ちを受けた。主力のバッグが絶不調に陥り、24年2月期に最終赤字を計上。赤字は8期連続となり、地盤沈下が止まらない。同社は24年7月に紳士服のコナカに完全子会社化され、経営再建を進めている。
コロナ禍が終息しても、アパレル業界には消費行動の変容への対応や原材料費の高騰など課題が山積している。今回、ダイヤモンド編集部は、アパレル企業の倒産危険度を検証し、ランキングを作成。その結果、29社が“危険水域”にランクインした。
次ページで、29社の顔触れを紹介していく。深刻なスーツ離れに見舞われている紳士服大手の青山商事やコナカもランクインした。