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外科医のつぶやき

落とすかもしれない状況の命も救われる“医者とのご縁”

柴田 高
【第21回】

 医者の診療とは、患者さんに対する治療をひとつの仕事と捉えると、数え切れないほどのPDCA(計画、実行、評価、改善)を体験する。しかし、命を託す患者の立場で考えると、診療という行為のほとんどが“実行”だけで終わっているように思う。最近、それを改めて実感することがあった。

 今年に入って部長のKさんから私の携帯に緊急電話が入った。

 「昨日、胸に違和感があるからと研究所のO先生にお話ししたら、すぐに大きな病院へ行けと言われまして」とKさん。

 「え! それで病院行ったのですか」と私。

 「はい、今、E大学病院ですが、すぐに入院しろって言われました。それが心臓の血管3本ともが詰まりかけで、もし帰ると命の保証できないって。週明け手術だと言われまして…」とKさん。

 「狭心症って言われたんですか」と問うと、

 「心臓の動脈が3本すべて99%詰まっていて」と。

 「わかりました、すぐに確認しますから」と電話を切った私はE大学病院の外科の友人に連絡し、Kさんの執刀医を確認した。

 「Kさん、ついてますよ。手術してくれるI先生は、たくさん手術されていて超一流の先生だから選択の余地なしです。絶対うまくいきます。私も祈りますから」と電話で伝えた。

 その1ヵ月後、上海の中華料理のレストランで食事をすることになった。

 「Kさん、本当にすごい。普通ではありえない」と言う私に、

 「いやーほんとに命拾いしました。痛みもほとんどなく、手術は完璧で、先生には本当に良くしていただきました」とKさん。確かに症状を自覚してすぐに大学病院で診察を受け、その3日後に心臓の大手術、その2週間後には職場に顔を出し海外出張先で普通に食事をされている。実のところKさんは、1年前に今の私の会社へ中途入社された。今まで、自覚症状はなく健康診断でも異常は指摘されなかった。幸い、職場には私を含め臨床医が2人いて、気軽に体の相談ができる環境にあった。車で言うとエンジンが爆発寸前に、走りながらエンジンを止め修理が成功したようなもの。医者としての私は劇的に人の命を救えたかをふと思い出していた。その後、意外と身近でめぐり会うことができた。

 「今日の食事会、近場でいいとこない?」と聞く私にY取締役は「社長が命を助けた焼き肉屋さん、最高にうまいんですが」と言葉が返ってきた。「え~。ボクが手術した患者さん?」との問いに「確か救命センターとか言ってましたよ」と。そのお店は会社から歩いて15分程度のところにあった。その2時間後、お店に入った私に、私が助けたという店主の奥さんが挨拶に来てくれた。

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柴田 高

川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。


外科医のつぶやき

現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。

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