大手製紙会社4社による大型設備投資戦が、ついに火ぶたを切った。国内市場がすでに成熟しているのを視野に、各社は輸出を本格化して「世界企業への脱皮」を目指している。ただ輸出は未知数な部分が多い。もし国内で価格のたたき合いへと突入すれば、供給力調整を伴う合従連衡(がっしょうれんこう)へと発展する可能性が出てくる。
大型設備投資の現状
四国特有の急峻な山がすぐそこまで迫ってくる海沿いの町、愛媛県四国中央市三島紙屋町。町の名前が示すとおり製紙産業で成り立っており、全人口の約7割が製紙産業とのかかわりを持っているという。その三島紙屋町を代表する大王製紙三島工場は、18年ぶりに総投資額470億円という大型マシンの導入で活気づいている。
ゴゴゴゴゴゴ……。8月末のある日、新マシンは大声でなければ会話できないほどの轟音を響かせながら試運転を行なっていた。全長225メートルという巨大な塗工紙(表面に塗料を塗った紙)生産マシン、通称「N10」だ。オンマシンコーターと呼ばれるこの機械は、紙を製造する「抄紙(しょうし)機」と、塗料を塗って光沢を出す「コーター」を連結させ、より表面に平滑性と光沢を出す「カレンダー」も付加。約8メートル幅の塗工紙を毎分1800メートル(毎時108キロメートル)で生産する、世界最高速レベルの性能を持つ。
この日は毎分1500メートル近いスピードで試運転しており、社員の表情にも余裕の笑みが見られた。「既存の塗工紙ラインは担当者が14人必要だったが、新ラインは9人で稼働できる。スピードも速く、これで競争力がないはずがない」(住田剛・大王製紙三島工場工場長代理)と自信を持つ。初出荷の日は近い。