ウォーレン・バフェットPhoto:Kevin Dietsch/gettyimages

ウォーレン・バフェットの名前は、ビジネスパーソンであれば一度は耳にしたことがあるだろう。「投資の神様」とまで呼ばれる人物だ。江渕崇氏は、かつて彼のインタビューを行った。江渕氏が感じた彼の人柄や資本主義観とは。※本稿は、江渕崇『ボーイング 強欲の代償 連続墜落事故の闇を追う』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

目の前に現れた
株主資本主義の「ラスボス」

 日本経済の中枢の地にそびえるラグジュアリーホテル、フォーシーズンズホテル東京大手町。2023年4月11日の朝、控室として用意された部屋で、私は数日間かけて練った質問を頭の中で繰り返していた。

「ミスター・バフェットの準備ができました」

 ビル群を見下ろすスイートルームに案内されると、トレードマークの朱色のネクタイ、少ししわが寄ったワイシャツ、ゆったりしたサイズのスーツに身を包んだ「投資の神様」が、緊張をほぐすような力強い握手で迎えてくれた。

 ウォーレン・バフェット、当時92歳。

 いかにも好々爺然とはしているが、世界でも5本の指に入る大富豪である。投資会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOとして5千億ドル(約70兆円)超の運用先を差配する。企業の本質的な価値を見定め、割安に放置されている優良株に長期投資する。自らビジネスの中身を理解できない企業には投資をしない。本拠とする中西部ネブラスカ州オマハにちなみ「オマハの賢人」と称される彼の哲学は、世界の投資家が範としてきた。

 ボーイングが招いた一連の危機(編集部注/同社が安全性よりも株主還元を優先する経営を進めた結果、2018年と2019年に連続墜落事故が発生していた)を出発点にしつつ、「株の国」のありようをテーマに定め、ロールプレイングゲームの主人公のように各地の現場で話を聞き続けてきた私にとって、バフェットは地球上の「ラストボス」ともいえる存在だった。

 表向きは株主価値の最大化を掲げつつも、歴代経営者がそれを乗っ取って危機に陥ったボーイングとは対照的に、ミルトン・フリードマンが描いた株主資本主義のいわば「理想型」を追求し、圧倒的な結果を出し続けてきたのがバフェットだからだ。

 日本のメディアがじかに話を聞ける機会は極めて限られる。生涯で2度目の来日となった今回、取材ができたのは朝日新聞と日本経済新聞の2社だけだった。日本企業への投資方針など、当日のニュースとして「見出しが立つ」話を引き出すだけでなく、バフェットの資本主義観を浮かび上がらせることに、私は狙いを定めた。