情報化に奥手なことで知られる建築・建設業界に果敢に攻め込むIT企業がある。建設プロジェクトのライフサイクル管理を謳った新概念を提唱するハンガリーのグラフィソフト社だ。同社のドミニク・ガレロCEOに事業の現状と今後の戦略を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト マイケル・フィッツジェラルド)
グラフィソフト社CEO ドミニク・ガレロ |
――グラフィソフト社が提唱する「バーチャルビルディング」とは何か。
分かりやすく言えば、建設/建築プロジェクトを単なる図面ではなく、そのすべてを情報ベースで管理していこうという考え方だ。
こういうと、建築・建設業界以外の方々からは、これまでもそうじゃかったの?と驚かれてしまいそうだが、じつは少なからぬ数の国において、建築・建設業界のIT利用は総じてCADを使った製図などにとどまっている。しかも、平面図や立面/断面図、材料リストなどの2次元の情報を元に、建物の内容が議論されているのが実情だ。
そこで3次元ツールを使って建造物を設計し、コストの算出や工期管理も含めて、プロセス全体の管理にITを活用していこうのがバーチャルビルディングの主旨である。
――似たような概念に、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)がある。それとの違いは?
建設プロジェクトのライフサイクル管理を重視している点においては、説くところは同じと考えてもらって差し支えない。ただ、われわれの場合は、単なる3次元モデルではなく、繰り返すが、建造物のコストや納期などの情報も付加するいわば5次元モデルの最高の姿を追求している。その意味で、最先端を走っている自負がある。
たとえば、当社の製品「ArchiCAD」を導入すれば、その中央データベースに建物の全情報が保存されるため、一箇所への変更が、平面図、立面/断面図、3次元情報、材料リストなど他のすべての箇所に反映される。