
危ない!逆走・衝突の原因は
高齢者の運転だけなのか?
暴走車がブレーキとアクセルを踏み間違えて、建造物に衝突したというニュースを毎日のように耳にします。またこのGWには、車が高速道路を逆走してあわや大惨事になりかけるといった危険運転が、各地で続発しました。こうした事故の多くは高齢者によるものと思われがちです。
確かに、統計上も高齢者の交通事故および事故死は増えています。有識者による「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究」(令和2年)でも、1999年以降、死亡事故そのものは減少しているのに対し、2019年における75歳以上の高齢運転者による死亡事故は99年の約1.5倍、80歳以上の高齢運転者によるものは同年の約2.2倍に増加しています。
アクセルとブレーキの踏み間違いによる衝突や高速道路の逆走などは、認知機能や反射神経の低下が原因になりやすく、「高齢者の運転を抑制すべき」であるという議論は当然するべきです。しかし、国の対策、高齢者の免許返納の促進ということだけでは、完全な解決になるはずはありません。
大都市圏はともかく地方では、車の運転ができなければ、買い物にも病院にも、もちろん仕事にも出られないのが現実です。国は一方で、年金財源の不足や社会保障費の増加を念頭に、高齢者になるべく現役で働き続けることを奨励しているのですから、これは矛盾した政策とも言えます。
私は高齢者の運転対策には自動運転車の大規模な導入か、地方ごとのミニバスのような公共交通機関の拡大が必須だと思いますが、これもかなりの予算と時間を必要とし、即効性のあるプランにはなりません。そして何よりも、こうした運転が「高齢者によるもの」という先入観こそが最も危険だと思うのです。