あこがれの伝説プレーヤーを育てたトレーナーの指導が受けられるとしたら?血眼で探していた限定版スニーカーが買えるとしたら?
こうしたスポーツ・グッズ・ファンの夢を叶え、心ごとつかまえようとしているのがナイキのマイケル‘エア’ジョーダン・ブランドである。
ナイキはNBA(米国プロ・バスケットボール協会)シカゴ・ブルズのスター選手マイケル・ジョーダンと契約し、エア・ジョーダンというシューズを社会現象となるほどの大ヒット商品に押し上げた。そして、「ジョーダン」は市場シェアで「ナイキ」に次ぐ2位のブランドに育ったのである。
ジョーダン・ブランドは、顧客の熱い気持ちに応え、顧客とつながるためにコミュニティをつくり上げた。今回はナイキのジョーダン・ブランドがどのように顧客とのリレーションを構築したのかをみていきたい。
伝説のトレーニングを
子供達も体験可能に
よくトレーニングが重要と言うが、その適切な方法を子供たちに教えている例は少ない。ナイキのジョーダン・ブランドは、満たされていないトレーニングという顧客ニーズに注目し、これをチャンスとしてとらえたのだ。
マイケル・ジョーダンと言えば、プロ・バスケットボール史上でも最大のスター選手である。そのジョーダンのエピソードの中でも印象的なのは、個人専属トレーナーのティム・グローバーと開発した伝説の「明け方ワークアウト」、“Breakfast Club”だ。ジョーダン宅にチームメイトも何人か加わって早朝にワークアウトし、その後にジョーダンのハウス・シェフの朝食で栄養補給するというものである。1989-90年シーズン後に“Breakfast Club”を始めてから、結果としてジョーダンを擁するシカゴ・ブルズは、1990-91年シーズンから6シーズンもNBAチャンピオンに輝いた。
ジョーダンに頂点を極めさせたこの“Breakfast Club”を、ナイキは顧客にも提供できないかと考えた。