性的同意は「藪の中」
作家・芥川龍之介の「藪の中」という短編小説がある。
平安時代、男が藪の中で亡くなっているのが発見され、その死の真相をめぐって関係者が証言をする。しかし、いずれも「自分」を中心に語っていることで証言が食い違い結局、藪の中で何が起きたのかわからないまま――という物語なのだが、今回の事件もそんな「藪の中」的な展開になってきた。
お笑いトリオ・ジャングルポケットの元メンバー、斉藤慎二容疑者による「性的暴行事件」のことだ。
報道によれば、斉藤容疑者は今年7月のバラエティ番組のロケ中、新宿区内に止まっていたロケバスの車内で、インフルエンサーの20代女性に同意を得ず、わいせつ行為や性的暴行を加えた。被害を受けた20代女性は警察に対して「許すことは絶対にできません」と述べているという。
しかし、そこへ驚くべき証言が飛び出した。斉藤容疑者の妻で、タレントの瀬戸サオリさんが、「我が子を守るため」という目的で、インスタにこのような釈明をアップしたのだ。
「相手の方からも行為がありSNSをフォローしたり連絡先を交換していたことは事実でこちらとしましてはロケバスの中のドライブレコーダー及びカメラの解析を警察の方に求めていました。一方的な行為ではなかったことを伝えている状況でした。私が弁護士の方から聞いている内容はこれが全て」(瀬戸サオリ インスタグラムより)
もちろん、これはあくまで斉藤容疑者側の主張に過ぎず、被害女性も代理人の弁護士を通じて「事実と異なるコメント」と反論している。ドライブレコーダーやそこに搭載されたカメラの解析というのも微妙だ。一般的な乗用車ならば車内の会話や映像はクリアに記録できるが、一般的なロケバスのように20人前後が搭乗するマイクロバスの場合、後部座席などで人目を忍ぶように行われていた行為まで捉えるのは難しい。カーテンなどを閉めていた場合、車内は暗いのでもっと難しいだろう。また、会話に関してもどこまで拾えているのかは定かではない。